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海外で生活する前に知っておきたかったコト!Overseas Tips

【連載】失敗から学ぶ海外人事(第 23 話 海外駐在員の人選ミス、これほど悲惨なことは無い)

2019.08.19

第 23 話 海外駐在員の人選ミス、これほど悲惨なことは無い

海外進出企業にとって、「誰に行ってもらうか」を検討するのは、とても重要な問題です。でも、意外に「人選」をいい加減にやっている企業が多いことに驚きを隠せません。海外駐在員の人選とは、いったいどうあるべきなのでしょうか?
そもそも、「海外駐在員とは?」というところから、始めないといけないのかも知れません。

 


海外駐在員の人選とは、いったい何を意味するのでしょうか?まずは、海外駐在員の役割というものを、会社として正確に分かっていなければなりませんね。

 


【赴任後に、海外駐在員に何が起こるのでしょうか?】

 


海外事業で、最も悲惨な結果を招く可能性が高い人選は、「機能偏重主義」です。これは、本当に注意が必要です。
たまたま日本で海外事業担当者だったり、単に外国語が堪能だったり、専門スキルが海外の顧客対応に必要だったりして、担当の機能部門から「行ってくれそうな人」を選んで白羽の矢を立てるということが、実際に良くあることなのです。

 


しかし、赴任地で彼ら駐在員を待ち受けているのは、実務だけではありません。現地で採用した部下達や、現地の顧客の担当者達といった、日本人とは言葉も感覚も違っている人たちが、手ぐすね引いて待っているのです。

 


実務的なスキルで選ばれて、本人も実務担当者だという勘違いをしたまま赴任すると、とんでもないことになってしまいます。多くの海外駐在経験者の皆さんは、必ず、このことを身を持って体験しています。

 


彼らが切実に感じたことは、何か?それは、「海外駐在には、マネージメント・スキルが必要不可欠である。」ということに、他なりません。

 


日本にいる社長始めとする経営陣に成り代わって、赴任地で事業所を経営するという使命を負っているのが、海外駐在員なのです。たとえ、派遣された人が、日本では管理職の経験
が無い担当者だとしても、着任するとそこには管理・指導すべき現地従業員が待ち構えている場合が多いのです。

 

 


【帰任してから理解できた、先人の言葉】

 


私は、メキシコ工場に赴任した時には、32歳の生意気な若造でした。駐在中は、工場稼働の大混乱、部下達の労務問題などなど、本当に苦労しました。しかし、起こった現象だけに意識が集中し、原因は全て自分以外の他にあると思い込んで
いました。

 


赴任前の研修で、有名な松下幸之助氏の「駐在員の心得」を知りましたが、当時、不遜な態度であまり気に留めていませんでした。「メキシコでは酷い目にあったなぁ」と、帰任してからも反省などすることはありませんでした。

 


ある日、書類を整理していると、赴任前の資料がポロっと出て来ました。私は、一枚の資料に目が釘付けになったのです。
そこには、とても重要なことが書いてありました。


松下幸之助氏 「海外勤務の心得」

一、異国に在ることを認識し、其の国の風俗・風習に早く慣れるとともにそれらを深く理解すること。
二、常に自己の健康に留意し、爽快な心で社員に接すること。
三、品質第一を旨とし、技術の妥協は許されないこと。
四、現地材料の開発を積極的に行ない、日本の依存から脱却すること。
五、日本人社員間は勿論(もちろん)のこと、現地社員との和を常に重んじること。
六、現地社員を育成し、経営全般に参画せしめ、現地社員による経営の時期を早めること。

 


しばらくの間、その資料を眺めていて、やっと言葉の意味が理解できたのです。駐在中に発生したさまざまな混乱は、実は、私が「どういう考え方で仕事をしていたか?」が、そのまま結果として現れていただけだったのです。

 


原因は、自分自身の中にありました。
「メキシコ工場にいた自分は、海外駐在員としては、まったく不適格な人材だった。」ということに、運良く気がついたのでした。

 


でも、帰任してから気づいたって、遅いですよね。最近では、海外駐在員を対象とした民間医療機関で、海外駐在員の適正を計測してくれるサービスがあります。赴任前に弱点や、補うべき事柄などが客観的に分かるため、活用している企業が増えてきたそうです。

 


【経営者を送り込むという認識】

 

  • 海外人事として、海外駐在員の人選をどのように捉えればいいのでしょうか?
  • 会社にとって、海外駐在員とはどういう存在なのでしょうか?
  • 彼らは、赴任地に何をしに行く人達なのでしょうか?
  • 彼らには、どういう素養が必要なのでしょうか?

 


海外人事は、これらのことを真剣に考察する必要があります。なぜなら、海外駐在員の派遣は、赴任先の現法にとっては「経営に携わる人材」の受け入れに相当するからです。海外駐在員の人選に深く関与することは、海外人事の仕事としては、非常に興味深く、やり甲斐のあることではないでしょうか?

 


次回は、「海外からの実習生・研修生の招聘」について、考えてみます
 。

 

【連載】失敗から学ぶ海外人事(第 22 話 赴任前の車の処分は、悲喜交々)

2019.08.12

22 話 赴任前の車の処分は、悲喜交々

海外赴任前の準備、いろいろ悩み事があるものです。経済的な負担も、結構ありますよね。特に、車!
これには、私も苦労しました。

 


私は、二回の北米駐在で、何度も車を買ったり・売ったりで、ほんとに大きな出費を強いられました。会社からの貸付金制度はあったものの、結構、家計に響きますよね。海外赴任に伴って、車の売り買いで苦労する人が多いのは事実です。
海外人事時代には、赴任予定者から車の処分についての相談を受けることが何度かありました。

 

ある日、人事の若手の N くんが海外赴任することに決まりました。

 


内示が出たその日に、彼は私のところに相談に来たのです。


N:「山本さん、僕、ついこないだ車を買ったばかりなんですよね。」

 


私:「そら、売らなあかんな。はやく売っちまえ。置いとく分けにはいかんやろ?君がいない間、私が乗っとこうか?事故したら、ごめんね。」

 


N:「・・・山本さん、冷たいっすね。憧れて、やっと買った車なのに・・・」

 


私:「売れ売れ!はよ、売れ!あたしゃ、昔、人事に相談したけど、車の面倒なんて見てくれんかったど。はよ売れ!赴任者の気持ちを理解する、良い機会ぢゃ!帰任したら、君がその経験を活かして、赴任者の車の取り扱いに関する制度設計をすればいいのだ!」

 


N:「山本さんって、わりと根に持つタイプなんですね。もういいです!自分で調べてなんとかしますよ! 」

 


私:「そうしなさい、そうしなさい!経験に勝る師は、ないのです」
N くん、早速、インターネットでいろいろと調べ始めたようでした。

 


結局、彼が希望する価格では売れず、時間切れでローンを完済できず「あし」が出てしまったのでした。こういう事例は、良くあることです。私の知っている限りでは、海外赴任に伴う車の売却損を補填する制度を設定している企業は、少ないようですね。

 

【車の売却、いろいろ難儀です】


海外赴任者が、車の売却でいろいろ難儀する原因の一つに、内示から赴任までに、あまり時間が無いことが挙げられます。
企業によって、社内の仕組みが違いますから一概には言えませんが、2
-3ヶ月しか準備期間が無いというのは、良くあることです。

 


十分に時間があれば、じっくりと車の処分を検討して、買い手を探すことが可能ですが、準備期間が短くなればなるほど、困難が伴います。

 


一年ぐらい前に内示されていれば、車の処分は楽でしょうが、そんなに前から内示して貰える会社は、ほとんどないでしょう。
しかし、あせって売却してしまうと、赴任直前まで車の無い不便な生活となってしまいます。できれば、日本を発つまで、愛車を使いたいですよね。

 


最近、多くの企業で、海外赴任者向けの車買取サービスや、車保管サービスを提供する業者さんを、赴任予定者に紹介しているようです。

 


車の査定から引き取りまで、非常にスムースに行ってくれる、便利なサービスです。場合によっては、赴任日に空港まで愛車を乗って行って、空港で引き取ってくれるサービスもあります。

 


こういうサービスは、赴任前でバタバタしている時には、ほんとに便利ですよね。

 


【車貧乏】


N くんの事例のように、若い人達は、ローンで車を買う場合があるため、本当に気の毒な結果になることがあります。
「車貧乏」することによって、海外駐在への動機付けが低下してしまう可能性もあるかもしれません。「社命」による海外赴任で、損失が出る場合には、会社は可能な限り補填をすべきですが、「車」については見解が分かれるところです。
しかし、海外人事としては、気分良く赴任して貰いたいという気持ちはあるのです。

 


私の場合は、二回の海外赴任で、忙しさにかまけて無計画に車を売却・購入を繰り返したので、損失はかなりの額になりました。
そういう経験をした駐在員は、沢山いらっしゃると思います。一方で、公平性を担保することが建前となっている人事制度には、「車貧乏」を配慮する制度は、なかなか「設計」しにくいのは事実です。

 

 


【なぜ、車貧乏が発生するのか?】


車貧乏に限らず、「家を購入して直ぐ赴任」等、海外赴任でさまざまな生活上の損失が発生するのは、結局、海外赴任がある日突然に内示され、赴任までに期間が短いってことでしょう。

 


突然に人生設計の変更を強いられる為に、それまでの予定を一旦「0」にしてしまわなければならないのです。「0」にすると、当然、損失が出ますよね。どうして、突然に内示されるのでしょう か?

 


それは、そもそも海外の人事異動について、しっかりした要員計画が無いからです。


事業計画を元にした要員計画が無い・・・なんて恐ろしいことでしょうか?


海外要員計画は、戦略的でなくてはなりません。それが、無いとしたら・・・海外事業に戦略が無いってことになってしまいますね。

 

計画の精度が高ければ高いほど、早期に内示できるので、赴任予定者に準備期間を長く与えることが出来ますから、個人の負担を軽減できるでしょう。

 


「突然にすまんが、海外へ行ってくれ!」というセリフが出てくる会社は、海外人事が機能を全うしていない・・・のかも知れませんね。

 


次回は、海外事業で最も重要とされる「駐在員の人選」について考えてみましょう。

 

【連載】失敗から学ぶ海外人事(第 21 話 さぁ帰任だ!住宅退去時のトラブル)

2019.08.05

 

21 話 さぁ帰任だ!住宅退去時のトラブル

企業の海外人事担当の A さんは、駐在員が住宅を退去する際に大家と 契約上の揉め事に遭遇したという話しを聞かせてくれました。ある日、ドイツの駐在員から、電話がかかってきました・・・・。

 


駐在員:「
A さん、 ちょっと相談があるんだけど」

 

A さん:「うん?なんか、あったんすか?もうすぐ、帰任ですよね。」

 


駐在員:「揉めてまんねん・・・」

 


A さん:「だれと?夫婦喧嘩は犬もくわんよ。それに、お貸しするほどのお金もないよ。」

 


駐在員:「不動産屋と 揉めてるんや」

 


A さん:「どんな揉め事や?」

 


駐在員:「俺、揚げ物が大好きなんだよ」

 


A さん:「揚げ物と 不動産屋が、どんな関係があるんや?なんか、面倒くさそうやな・・」


駐在員:「まぁ、話は最後まで聴いてちょうだい・・」

 


駐在員の話を聴いているうちに、ほんとに面倒なことになっていることが分かってきたのです・・その駐在員は、揚げ物が大好きなんだそうです。 彼だけではなく、 ご家族全員、揚げ物が大好きなんだそうです。

 


だから、毎日のように、奥さんは夕食に揚げ物を作っていたそうです。鳥の唐揚げ、天ぷら、魚フライ、コロッケ・・・美味しそうです。その結果、何が起こったかというと、キッチンの壁に油汚れが染み付いてしまっていたのでした。

 

 

ドイツの人たちは、物凄い綺麗好きで、退去時にはちゃんと原状復帰しないと揉めると聞いていたので、奥さんは、毎日、一生懸命に油汚れを綺麗に掃除していたのだそうです。

 


帰任が決まって、退去の為の不動産屋のチェック を受けた結果、キッチンの壁が汚れてい
るという指摘を受けただけでなく、全ての壁を塗りなおせという要求が来たというのです。

 

 

【十分に綺麗なんだけどなぁ・・・】

駐在員は、 A さんに証拠としてキッチンや壁の写真を送って来ました。確かに、綺麗に掃除されています。日本の常識で考えると、確かに「ぴかぴか!」です。

 


でも、 不動産屋の最後通牒は・・・「壁を全部塗りなおせ」 でした。

 


駐在員:「こっちの連中は、恐るべき綺麗好きや!ついていけまへんわ!とほほ・・・」

 

 

このままだと、多額の修繕費を支払う羽目になるし、敷金も返してもらえなくなりそうだと、とうとうギブアップして、 海外人事の A さんに電話をしてきたという次第でした。

 


【法律が違う!常識がちがう!】


A さん:「結局、私にどうして欲しいの?」

 


駐在員:「壁を塗り替えなきゃならない。会社負担で、なんとかならんか?という相談や」皆さんが海外人事なら、どういう対応をするのでしょうか?

 


会社によって、ポリシーが違いますから、いろいろな考え方があるのでしょう。その時の
A さんは、会社負担はしないと返事をしました。海外で暮らすということは、常識や判断基準が日本人とはまったく異なる人達の中でサバイバルするということです。

 


賃貸契約の在り様も、日本と違っているのは「当たり前」のことですし、汚したのは個人の生活上の問題です。しかも、「原状復帰」 は賃貸借契約に詳細に謳われていることですし、契約の主体は駐在員本人でしたから、特に会社負担にする理由は無いと判断したのです。

 


会社負担は無しということになると、 駐在員の闘争心に火がついてしまい、やる気満々で不動産屋と全面対決姿勢で遣り合いました。 彼は現地の弁護士に相談しましたが、 退去時には壁を借主が自分で塗り替えるのが、ドイツでは常識だと知ったのです。彼は、自分で壁塗りをすることが出来ないので、しぶしぶ専門業者にお金を払って綺麗にしたのでした。

 

【A さん、ありがとう ! 】

数ヶ月後、 A さんが喫煙所でタバコを吸っていると、例のドイツ駐在員だった彼がいることに気がつきました。

A さん :「おぉ!お帰りなさい!元気そうで、なによりです。」

 

元駐在員:「おぉ!お久しぶりです!」

 

元駐在員:「俺、いい経験しましたよ。駐在中に、あんなに真剣に交渉したことなかったですよ。嫁さんと 、 あんなに協力しあったこと は、なかったですわ。外国の人と交渉する難しさ も 良く分かりました。 A さんには、お礼を言いたいぐらいですわ。今度、海外へ出る時には、もっと上手くやりますよ。」

 

 


A さん:「そうですか。そう言っていただけると、気持ちが少し軽くなりますわ。」

 

 

何もしないことが、人材開発に一役買うってこともあるんですね。ひょっとしたら、グローバル人材が不足している会社って、海外人事が面倒見が良すぎるのかも知れません。最近では駐在員の交替は、円滑さが求められるようになってきました。海外での賃貸契約トラブルのリスクを回避する為に、専門の海外不動産サービス業者を活用する企業が増えてきています。


昔のように、駐在員に様々な経験をさせて人材開発するというような、悠長な時代ではなくなったのかもしれませんね。

 

 

次回は、海外駐在の「車の処分」について、考えてみます 。

 

 

 

【連載】失敗から学ぶ海外人事(第 20 話 海外赴任、住居探しでのトラブル)

2019.07.29

 

20 話 海外赴任、住居探しでのトラブル

海外で住居を探すって、手間がかかりますよね。歴史の長い海外事業所に赴任する場合には、多くの先輩駐在員がいて、いろいろサポートしてくれますから、安心です。今回は、ある駐在員が経験した「本当にあった、怖い話」を、皆様にお話ししたいと思います。

 


ある企業の北米駐在員の
A さんは、 空港で本社の新規赴任者 B さんの到着を待っていました。 B さんは先輩社員ですが英語はまったく出来ず、 アメリカに住むのも初めてで、不安な面持ちで到着ゲートから出てきました。

 


A さん:「お疲れ様です。ようこそいらっしゃいました。明日から、早速、住居をさがしましょう。」
B さん「A くん、いろいろ面倒かけるけど、宜しく頼むね。」

 

 


【順調な住居選定・・・】


B さんは、「候補」を 2-3 軒準備して欲しいと連絡してきていました。 生活設営を支援する羽目になった A さんは、 現地の顔なじみの不動産屋さんに手配を依頼し、めぼしいところを何軒かピックアップしておきました。到着の翌日から早速、 B さんに同行して、不動産屋さんと物件の下見をしに行きました。

 


日本と現地の違いを追加説明しながら、通訳するのは結構大変です。とりあえず一軒、 リーズナブルな物件があったので、「ここに決めようかな・・」という雲行きになったとき・・

 


B さんは、「ここで良いような気がするんだけど、嫁さんの意見も聞いてみないと・・・」と 言うので、不動産屋さんが日本にいる奥様にも物件の詳細な写真をチェックできるように、ホームページにアップしてくれました。

 


B さんは、日本にいる奥さんにその写真をパソコンで観てもらいながら、電話で意見を聞いたようでした。その時 A さんは、 まだ B さんのご家庭では奥さんが実権を握っていることを、まったく知らなかったのです。そのことを知らない為に、後でとんでもないことが起こったのでした。

 

 


【焦りは禁物!上手く行き過ぎるときは注意しよう!】


物件の下見をした翌日、
B さんは言いました。「嫁さんと昨日検討したのだが、外国のことはよく分からないから、そっちで決めちゃって良いよと言ってた。俺、昨日の物件に決めるよ。」よっしゃ!決まったあ!

 


意外に簡単に決まってよかったな・・・・と、ほっと胸を撫で下ろしながら、不動産屋さんのオフィスに行って、
B さんはめでたく 契約書にサインをしたのでした。

A さんは役目は終わったなと、ほっとしましたが、 なんとなく妙な胸騒ぎがしたそうです。

 

 


【奥さんからの
NG 出し・・】


一週間ほど経ったある日、とんでもないことが起こったのです。よくよく、間取りや広さをチェックした
B さんの奥さんは、心変わりしてしまったのです。B さんと 車で移動中に、携帯電話がけたたましく鳴り出しました。電話をとった彼は、突然・・・

 


「えーーー、うーーーー、そっかーーー、うーーーん、うーーーん、あーー、そっかーー」苦しそうに、唸りだしました。

 

電話から は、 日本から 奥さんが大声で文句を言っているのが漏れ聞えていました。

「あのね A くん、 嫁さんが、あの家が気に入らないらしいんだよ。

間取りとか、よくチェックしてみたら狭いから、契約解除してもっと広いとこを探したいって言うのよ。

今からでも、契約解除できる?」

 

はぁ?あんたら、何言ってんの?

 

 


【住居選定で配慮すべきこと】

私は、物件を見繕う時に、「治安が良い地域であること。」を第一条件にしていました。そのほかに、良い学校が近くにあること、買い物の利便性等を念頭に選定したのでした。契約した物件は、とても良い物件でしたし、賃料も妥当だと考えていました。

 


ところが、契約済んじゃってるのに・・ ・家が狭い?って、どういうこと?
「そっちで決めちゃって」って、いってたじゃん・・でも、どうしても嫌だというから、仕方ありません。

 


不動産屋さんに、「今から、契約解除できる?」って、訊いてみました。

 


すると、「オーナーに確認したらね、契約破棄してもいいけど、訴訟するって言ってたよ。今から、弁護士に相談するみたいだよ。言っちゃなんだけど、オーナーさんには契約上の過失は全くないし、契約してすぐに破棄するなんて、俺もあまり経験がないよ。こりゃ、揉めるよー。どうする?」と、軽く言われてしまいました。

 


訴訟かぁ・・・

 


(つまり、オーナーさんは、激怒してるってことだな・・・そりゃそうだよな、契約書にサインして、直ぐに「やっぱり、やーめた!他の探す!」なんてことは通用しないよな・・・
でも、一度、実際の訴訟ってどんなものなのか、勉強の為に経験しとくってのもありかも・・・いやいや、それは不味いな・・・・)などと、思いながら、オーナーさんが徹底抗戦の構えであることを、 B さんに伝えると、「やっぱしなぁ・・・」と、憂鬱そうに黙り込んでしまいました。

 

 


結局、彼は奥さんとの激しいバトルの末、契約満了まで待って、他の物件に引っ越すということで決着しました。新しい家に引っ越すまでの間、折に触れ、彼は奥さんから「家が狭い、気に入らん」という愚痴を聞き続けることになったことは、言うまでもありません。

 

 


【住居のゴタゴタは、業務に響きます】


一般的には、住居関連のトラブルは、解決に時間がかかる場合が多いです。それに、揉めると簡単に訴訟になります。そういうゴタゴタに駐在員が巻き込まれるのは、会社にとっても、好ましいことではありませんよね。

 

A さんが犯した過ちは、早く住居を決めなければという焦りから、ご本人と奥さんと が意見調整する為の、十分な時間を取る配慮を怠ったことでした。また、契約の重要性を十分に本人に説明しなかったことも敗因でした。

 

 

海外のビジネスでは、契約の取り扱いは、とてもシビアです。海外でのビジネスに慣れてくると、必ず契約書を自分で確認し、不利な条項が記載されていないかどうかをチェックする習慣が身についてきます。もっと慣れてくると、弁護士に相談
するという知恵も付いてくるのです。

 


でも、赴任したばかりの初心者駐在員には、契約に関するリスク感覚が、未発達の場合が多いですね。海外人事は、そういった生活上の契約リスクを、赴任先や赴任者本人に丸投げするのではなく、赴任前にレクチャーしておくべきだと思います。

 

 


最近では、日本人駐在員向けに不動産サービスを提供している会社があります。家探しから、契約・賃料管理・クレーム処理まで対応してくれるそうです。

 


多くの日系企業が、海外不動産サービス会社と契約し、生活設営支援の合理化とトラブル回避を図っています。

 


昔は、前任者が後任者の生活設営支援をするのが、海外駐在員の暗黙のルールになっていました。しかし、引き継ぎ期間中に、バタバタと生活設営をやるので、前任者・ 後任者の双方に大きな負担が掛かっていたことは事実です。

 


「赴任後、速やかに業務に就く」が、優先される時代になってきたようですね。

 

次回は、帰任時の「住居退出時のトラブル」について、考えてみます 。

 

 

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