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海外で生活する前に知っておきたかったコト!Overseas Tips

5月2019

【連載】第 12 話 えっ?バイク持って帰りたいって?取扱規程外の願い事

2019.05.27

12 話 えっ?バイク持って帰りたいって?取扱規程外の願い事

 

 

 海外人事を担当していると、駐在員からのいろいろな問い合わせや「お願い事」に対応することがあります。

 

 

ある会社の海外人事課長の A さん、ぶつぶつ愚痴をいっています・・・・
A:「こないだね、電話かかってきたんですよ。若い駐在員からね・・ ・」
私:「ほー。直接、人事に電話かけてくるんですか?」

A:「そうなんですよ。うちは、駐在員の相談にはオープンに耳を傾ける方針なんですよ。」
私:「それで、なんて言ってきたんですか?」
A:「アメリカで、バイクを買ったって言うんですよ。学生時代から、そのバイクに乗るのが夢だったらしく、貯金をはたいて買ったらしいんですよ。」
私:「ほぉー、若いって、いいっすねぇ。」
A:「ぜんぜん良くないっすよ!帰任するんで、バイクを日本に送りたいんだけど引越貨物として認めてくれっていうんですよ!」
私:「へー、そうなんですね。ところで、それは認められないんですか?」
A:「当たり前ですよ!海外駐在員の取扱規程では、ありえないですよ!」
私:「じゃ、駄目だ!!って、言えばいいじゃないですか。」
A:「それがねぇ、彼にはかなり無理を言ってアメリカに行ってもらったから・・・。」
私:「それとこれとは、話は別なんじゃないですか?」
A:「そうなんですけどねぇ・・・・。無碍に断るのも、なんだかねぇ・・」
私:「御社は、意外と駐在員に優しいんですね。」
A:「大手さんのことは分かりませんが、うちぐらいの規模だと、みんな顔を知った人達 だからねぇ・・・。いろいろ、近所づきあいが面倒なんですわ(笑)」

 

 

 

良くある話ですね。海外人事も、いろんなことに気を使うのですね・・・
あなたの会社の海外人事なら、どんな対応をするのでしょうか?

 

 

 

 日本の会社の「海外駐在員取扱」は、どこも概ね同じような建て付けになっています。
特に、海外引越の規程は、「常識的な範囲」とか「通常、考えられる範囲」等の文言で、荷物として認められる物品の範囲を規定している場合が多いようです。多くの企業で、ピアノや自動車等を、会社補助の引越荷物とは認めていません。

 

 

 

 私が海外人事を担当していた時には、前述のバイクのような事例は、検討するまでもなく、問答無用で「NG」にしていたと思いますね。その人のことを特別扱いして、趣味のバイクの輸送に会社がお金を出すべき、必要十分な理由が見当たりません。

 

 

そうは言っても、人事屋さんも人間ですから、理屈を並べ立てて杓子定規に却下するのは、あまり気持ちの良いことではありませんよね。出来ることなら、「お願い事」など来ない方が、気が楽なんです。

 

 

【規程が想定しているのは?】

 

 

 海外引越は、赴任費用の中で最も高額です。その為、多くの企業で、 「海外での一般的・常識的な日常生活」を想定し、荷物の範囲と容積・重量を制限しています。

 

 

 しかし、この「常識」というのが曲者です。「常識」の「解釈」は、人によってちがっているからです。最近は、赴任者から海外人事への「海外引越のお願い事」が、多く寄せられるようになったようです。「解釈」を論じ合うことほど、面倒なことはありませんよね。

 

 

 私も、海外人事時代には、いろいろな「お願い事」対応をしていました。この「お願い事現象」については、人々の価値観や生活スタイルの多様化が進んだことから、規程が想定している「常識」 では、カバー出来なくなってきたと分析する向きもあります。

 

 

でも、本当にそうなのでしょうか?

 

 

従来の海外駐在員規程が想定していたのは、「海外での一般的・常識的な日常生活」ではなく、「わざわざ言わなくても、常識的な判断ができて、会社に無茶を言うようなことはないだろう」という、駐在員に「期待する人物像」だったのかも知れません。

 

 

【本当に変わったのは、何なのか?】

 

 

海外駐在が珍しかった時代、企業には人柄や素養を考慮して、駐在員を選抜する余裕があったように思います。

しかし、多くの企業が海外事業を急拡大するに従って、人材不足が問題視されるようになってきました。人材確保の為、「全員が海外駐在候補」という時代になってきましたよね。

 

 

 その結果、嘗ての私のような、人生設計で海外駐在など想定してないような社員にも、白羽の矢を立てざるを得ない状況があるのでしょう。
企業が「期待」してきた駐在員の人物像とは、少し違う考え方をする人達が、海外に出て行
くようになったのです。

 

 

 

本当に変わったのは、人々の価値観でなくて、「ビジネス環境」なのかもしれませんね。

 

 

「バイクの輸送」等の事例が散見されるのは、従来の海外駐在員規程が、ビジネス環境の変化に追随できなくなってきたという「囁き」なのでしょうか。

昔と違って、日本企業を取り巻く環境は、どのように変わったのでしょうか?そして、これからどうなって行くのでしょうか?

海外人事としては、駐在員からの「お願い事」を面倒がらず、「変化の予兆」として洞察することが重要だと思います。

 

 

海外人事としては、駐在員からの「お願い事」を面倒がらず、「変化の予兆」として洞察することが重要だと思います。

 

 

次回は、海外駐在員の処遇の目玉の一つ、「一時帰国の取扱」について考えて見ます。

 

 

 

【連載】第 11 話 海外引越、業者選定の要諦

2019.05.20

11 話 海外引越、業者選定の要諦

 海外人事担当者の A さん、来期の予算を策定しながら、ため息をついています。
「対前年比の-
10%ってかぁ・・・給料減らすか?いやいや、そりゃできないな・・」

 

 海外人事担当者の A さん、来期の予算を策定しながら、ため息をついています。
「対前年比の-
10%ってかぁ・・・給料減らすか?いやいや、そりゃできないな・・」

 

 A さんも、上司から強いプッシュがありました。
「もう国内だからぁ~、海外だからぁ~、なんて言ってられるような世の中じゃないんだ!
海外の連中にも痛み分けしてもらわんとな。高止まりしてる経費洗い出して、見直しをかけるんだ!って、社長に言われちゃった。だから、たのんだよ。」

「そうは言ってもなぁ~。みんな、怒り出すだろうなぁ~・・・」


 A さん、プレッシャーで最近は食事も喉を通らなくなってきました。
人事屋さんなら、一度は経験する「コストダウン圧力」ですよね。私も、随分悩んだ覚えが
あります。

 

海外人事の場合、どこの会社もそうですが、給与以外の経費でなんとか辻褄を合わそうと
するのです。労務管理上のリスクは、避けたいのです。

 

私の場合は、「猫の首に鈴をつける」度胸のない小心者で、保身に走りました。 数ある経費の中で、一番目立つところで、 やり易いのは・・・


そうです!海外引越の経費です!
そうだ!いいこと思いついた!海外引越業者の見直しで、コストダウンだ!

 

でも、ほんとにそれでいいのでしょうか?

 

海外引越業者の見直し、なかなか奥の深いテーマですよね。私も、コストダウン圧力には苦労しました。でも、全社的に利益改善に取組んでいる最中、海外人事も着手せざるを得ませんよね。悩ましいところです。

 

私は、経費のコストダウンを考えるときには、必ず踏むステップがあると思っています。
それは、「そもそも、なぜその経費を使っているのか?」ということの理解です。

 

それが分かってないと、価格だけで安直に発注先を変更するのは危険です。

 

【何かを変えたら、必ず副作用が起こる】

 

企業経営において、深刻な不具合が起こる仕組みには、決まったパターンがあります。


会社で仕事をする中で、私たちは様々な不具合に遭遇します。当然、再発を防止するためには、原因を知って対策を講じなければなりません。不具合の原因を分析していると、「設計の変更」「プロセスの変更」「設備の変更」「メソッドの変更」「担当者の変更」等、いくつかの定番があること に気が付きます。何かが変わった時に、不具合が発生し易いのです。

 

その定番の中に、「仕入先の変更」というのがあります。海外引越業者の見直しは、まさにこのパターンなのです。

海外引越業者さんを、価格だけをベンチマークして決定したら、どんな「副作用」が想定されるのでしょうか?

 

【海外引越の困難は、赴任地側にある】

 私は、海外引越を二回経験しました。海外人事では、海外引越業者さんの選定をやった経緯があります。経験上ですが、赴任時の国内での荷物の梱包・引取り作業と、帰任時の国内居住先への配送については、どの海外引越業者さんのサービスも、あまり差異を感じませんでした。

 

 つまり、日本国内でのサービスには優劣を見つけ難いのです。その為、海外引越の事情を良く知らないと、価格の差に注目してしまい勝ちです。

 

実は、赴任者と奥様方は、赴任地での配送プロセスで不満を 持つことが多いのです。

 

【赴任地で起こる様々な出来事】

 私の海外人事時代の経験では、「赴任地での配達で日本人の立会いが無く、言葉が通じなくて困った」というのがありましたね。 奥様が留守番して荷物を待ち受けていると、屈強な現地作業員がドヤドヤと 搬入して、心細い思いをした・・・っていうことなんでしょう。海外の生活に不慣れな奥さんにとっては、大事件だったかもしれません。

 

 その他では、「現地で配達日・時間等の連絡が行き違って困った」、「連絡貰った時間に、一向に来る気配がなく、遅れるという連絡も来なかった」、「知人から頂いた大切なグラスが割れていた」、「通関トラブルで配達が遅れた」等があったと記憶しています。

 

その他では、「現地で配達日・時間等の連絡が行き違って困った」、「連絡貰った時間に、一向に来る気配がなく、遅れるという連絡も来なかった」、「知人から頂いた大切なグラスが割れていた」、「通関トラブルで配達が遅れた」等があったと記憶しています。

 

ペットの問題は、非常にシリアスです。笑い事ではありません。

私自身が経験したのは、二度目の海外駐在で、荷物の一部がどういうわけか配達されず、業者からは1ヵ月近く連絡が来なかったことがありました。のんびり屋の私も、さすがに変だなと思って担当者に問い合わせたら、ずっと倉庫に放置されていたことが判明。

 

赴任直後の不安な時期、激怒して業者さんへクレームする人、海外人事に電話で愚痴をこぼす人、ぽっきりと心折れちゃう人、反応は様々 ありましたが、心理的なインパクトが強く、何年経っても覚えている人が多いですね。

 

【ここで今一度、よ~く考えてみましょう】

 価格の妥当性は、とても重要な検討項目です。それと同時に、もう一つとても重要な視点があると思っています。

海外人事は、赴任者と帯同家族を安全に赴任地へ送り込み、円滑に現地の業務に就いてもらうという、重要な役割を担っています。
海外引越業者さんは、取引業者である一方で、海外人事機能の一部分を担ってもらう重要なパートナーという側面があることは誰にも否定できません
 。

 

 値引きを一方的に要請し、不具合があったら声高にクレームし、他に安価なサービスがあったら直ぐに転注して、「それでは、さようなら・・・」。

 そんなことを繰り返してきた企業が、品質問題で販売不振に陥ったり、不祥事が露見して苦境に立たされたりする様を、私たちは新聞やテレビで容易に知ることができます。

激しい競争の中で力強く生き残っている企業は、仕入先企業と協力しながら品質を向上させ、「安いもの」より「本当に良いもの」を買うことに拘っていることは、良く知られています。
海外人事は、引越業者さんから「物を運ぶサービス」ではなく 、「海外赴任への安心感」を買っているのかも知れませんね
 。

 

次回は、海外人事担当者の頭痛の種、「海外引越、規程外の要望」について考えて見ます。

 

 

 

 

 

 

【連載】 10 話 出鼻をくじく、海外引越トラブル

2019.05.13

10 話 出鼻をくじく、海外引越トラブル

ある会社の海外人事担当者さん、赴任したばかりの A さんから国際電話です。
「あのねー、荷物がまだ届かないんですよー。本日配達の予定なんだけどねー」

 

ありがちなクレームです。

 

 周りは外国人ばかり、オフィスでは慣れない言葉でお仕事、あっちを向いてもこっちを向いても分からないことばかり。でも A さんは、なんとか任期を全うしようと、自分にはっぱをかけつつ、故郷を離れて来たのです。

 

 周りは外国人ばかり、オフィスでは慣れない言葉でお仕事、あっちを向いてもこっちを向いても分からないことばかり。でも A さんは、なんとか任期を全うしようと、自分にはっぱをかけつつ、故郷を離れて来たのです。

 

今日は、海外引越についてのお話です。

 

 そもそも、荷物の届け先は、日本を遠く離れた外国です。予定通りに荷物が着くなんて、奇跡です。ゴルフだって、あんなに広いコースの遥か向こうの小さい穴に、数回で入れるなんて奇跡ですよね。

 

でも、海外引越会社の皆さんは、日夜努力しておられます。それでもやっぱり荷物を予定通り無事に届けるのは、困難が伴うのです。

 

 荷物を引き取ってから、船にのせて、気象条件を乗り越えて、遠い港につけて、陸に揚げて、通関して現地のトラックにのせて、赴任地のあなたのお住まいまでたどり着き、「ぴんぽーーーん」とベルがなるのです。

 

 海外引越は、引越会社の皆さんの努力で、概ね無傷で予定通りに到着します。でも、海外引越は国内の宅配便とは事情が違います。たまには、想定外のトラブルもあります。

 

 国内引越との大きな違いは、海外引越のトラブルは、挽回に時間と労力がかかるということです。現地の生活や仕事に不慣れな、着任したばかり の駐在員にとっては、引越のトラブルによる心理的なダメージは思ったより大きいのです。

 

海外人事は、赴任者の引越には細心の注意を払うべきだと思いますね。海外引越は、単に荷物を運んでいるのではなく、「駐在員と家族の生活」を運んでいるのです。

 

【海外引越って、かなりのストレスです!】

 

 

 海外引越の在り様は、企業によって海外赴任者の取扱規程が違っていますし、利用する海外引越会社も違いますので、一概には言えません。しかし、共通していることが一つだけあります。それは、海外引越は「大きなストレス」だということです 。

 

 

 現地での仕事や生活に不安を抱えながら、引越の準備をしていくのは大変な作業です。独身者や単身赴任者の場合は、比較的作業量は少ないかもしれません。家族帯同で赴任する人は、大変です。

 

 

 その為、海外引越会社では、長年の経験と厳しい競争の中で、サービス向上に努めてこられました。今では、私が海外赴任していた頃と比べて、かなりサービスは向上したと思います。

 

【奥様、大活躍!】

 

 一般的には、メインの船便の段取りは奥様が取り仕切る羽目になってしまいます。なぜなら、帯同家族はご主人の赴任の数ヵ月後になるからです。ご主人は赴任先での仕事のことで頭がいっぱいですよね。私も、そうでした。

「あと、よろしく!」

と言って、出て行っちゃうご主人が多いようですね。これについても、私も、そうでした。

 

 

 梱包作業の基本はフルサービス(引越会社が全て梱包)ですが、航空便・船便・実家送り・トランクルーム送りを予め決めておかなければなりません。

 

忘れ物すると大変ですから、奥様はとても気を使いながら仕分け作業をするのです。子女帯同する場合は、子供達の荷物もきっちりと準備しておかなければなりませんよね。

 

 

奥様の多くが、衣類は自分で梱包したいと希望されます。衣類といっても、けっこうしんどい作業です。

 

 

【家の中が、空っぽ・・・・】

 

 

 住み慣れた家を離れるときが来ました。奥様は、がらんと空っぽになった部屋にしばし佇み、引越業者さんと最後の積荷の確認を済ませたら、いよいよ出発です・・・

 

 

 あれ?ガス、水道、電話、インターネット、新聞、ケーブルテレビ・・・いろんな契約はちゃんと解約出来たでしょうか?

 

 

 奥様方の悲鳴が聞こえてきそうです 。

でも、休んでいる暇はありません、いよいよホテルに行って、明日の朝には飛行機に乗らなければなりません。

 

 

「あ~、つかれちゃった・・・」

 

 

これは、私が妻を空港に出迎えに行った時に聞いた、最初のセリフでした。

 

 

【飛行機の中は、天国・・・】

 

 

妻曰く、

「飛行機に乗ったら、天国に来たみたいだったわ。何もしなくていいし、何も考えなくていいし、良く眠れた~」

後年、海外人事に配属された私は、多くの帯同配偶者の皆様が同じような経験をされていると知って、頭の下がる思いをしました。

 

 

海外事業は、奥様方のサポートあってのことだな・・・と痛感した次第です。

 

 

【海外引越の業者選定は、価格で決めるか?】

 

 

 これは、とても悩ましい問題です。

従来は、海外引越業者の選定は、人事が行なっている企業が多かったですよね。人事が業者選定する場合には、必ず人事の視点が入っています。

 

海外人事担当者が業者を選定する場合、価格だけでは決めないという場合が多いのです。利便性、国内でのサービスと現地でのサービスの在り様、営業担当者の人柄など、総合的に判断しています。

 

価格だけではなく、赴任者が円滑に着任し、業務に気分良く専念できるかどうか、という視点があるのです。

 

でも、長引く不況で、購買の視点で選定する会社が増えてきたようです。当然、価格の評価が優先される、「コストダウン」の視点が重要視されるようになってきました。

 

海外赴任の様々なサポート体制を構築する際、人事の赴任者への配慮の視点で設計するのか、購買の「コストダウン」の視点で設計するのか・・・、

 

海外人事は、今一度、「海外赴任サポートの目的とは?」という原点に立ち返って、見つめなおすことが必要かもしれません。

目的認識の在り様によって、サポート体制の在り様も変容し、結果も変化します。

 

 

【病は知らぬうちに体を蝕んでいる】

 

 

「コスト重視型の赴任サポート」は、利益を追求する企業としては、効果が定量的に確認できるので、経営者の理解を得易いのです。海外人事は、改善効果を数値で表現することが可能で、社内で評価され易いのかも知れません。

 

一方で、「人事の配慮型の赴任サポート」は、その効果が赴任者や帯同家族の心で計られるものですから、定量的な良し悪しの確認が困難です。

 

駐在員や帯同家族に評判が良いサポートを提供したからといって、売上増加に寄与したかどうかを確認できることもなく、コストダウンにつながらない場合もあります。

 

利益計画に責任を負っている経営者にとっては、 効果が見えにくく、あまり考えたくない領域です。今の世の中、この領域を社内で主張するのは、とても勇気が必要なのかもしれません。

 

しかし、日本を遠く離れて、姿を見ることの出来ない場所に派遣する駐在員が、会社の対応に不信感を抱くことほど、恐ろしいことはありませんよね。

 

 

少々話が変わりますが、心で計られる評価を軽視すると、じんわりと何年も経過してから事業に悪い影響を与えて行く場合があります。

 

しかも、その影響は、経営者が認識できないまま放置され、ある日突然、大きな事件の発生によって顕在化するのです。昨今の企業不祥事の報道で、私たちは実例を観察することができます。

 

 

 

 問題が起こった後、必死で近因(一次要因)の対策に奔走するのですが、遠因(背景にある真の要因)は見過ごされ、また同じ間違いを繰り返すのです。真の要因は、実は経営者と社員の心の中にあるのかもしれず、それは目視できません。

 

 

あなたの会社には、この「沈黙の暗殺者」が既に潜んではいませんか?

 

 

次回は、「引越業者選定のポイント」について、考えてみたいと思います。

 

【連載】失敗から学ぶ海外人事(第9話 初代駐在員の学校探しは珍道中)

2019.05.07

9 話 初代駐在員の学校探しは珍道中

帯同子女の学校探し。親としては、ほんとに頭の痛い問題です。日本人学校がある地域では、比較的安心して赴任することができます。でも、現地校しかなかったり、インターナショナルスクールしか方法がなかったり・・・「お父さん、独りで行ってくれるかな?」

そういう選択も、場合によっては「あり」かもしれません。でも、たまにしかお父さんに会えないと、子供は寂しがるかも知れれませんね。いずれにせよ、家族全員の人生設計が大きな岐路に立たされるのが、海外赴任なのです。私は、会社のメキシコ工場立上げの初代駐在員として、子供達の学校探しをしました。

その珍道中を、今回のお話し致します。
赴任地には、日本人は非常に少ない地域だったので、日本人学校などありませんでした。「学校かぁ~。それって、 どこにあるんかな?」赴任直後、学校探しが、私の取組むべき重要課題でした。
(赴任地はメキシコー米国の国境沿い。工場はメキシコ側、居住地はアメリカ側でした。)

そもそも、何処にどんな学校があって、どういう手続きを踏めばいいのか、全くしらなかったんです。もともと能天気な私は、「なんとかなる」と思っていたので、子供の教育の準備など何もしていませんでした。今から思えば、親として失格だったかもしれませんね。

他の日系企業も幾つか進出していましたが、数が少なく交流もありませんでした。しょうがないので、知り合った現地の人達にいろいろ訊いて、学校に直接行って情報を集めるしかありませんでした。

 

 

現地校にもいろいろあるよね・・・。


いろいろ調べましたが、なかなかしっくりくる学校がありませんでした。公立の小学校は、英語の出来ない生徒はとりあえず ESL(英語教室)に通って、学校での授業に支障が無い程度まで、英語習得の必要がありました。そんなことやってると、勉強が一年ぐらい遅れてしまいそうです。


私立の学校は、宗教色が強かったり、独自の特殊な教育カリキュラムを採用していたりと、日本へ帰国後の高等教育を受ける場面で、支障が出そうなところが多かったと記憶しています。


もっと困ったことは、英語の出来ない日本人の児童を受け入れることに、難色を示す学校が多かったことです。その地域では、日本人は珍しい存在で、実際に日本人と交流した経験が無い人が多かったようです。

 

地元の人に訊くのが一番!

調べれば調べるほど、困難が立ちはだかって、子供達の学校が決まりませんでした。そんなある日、現地の取引業者の社長さんと、夕食をご一緒する機会がありました。彼は、典型的な陽気なメキシコ系アメリカ人でしたので、能天気な関西人の私とは気が合いました。

「この土地での生活で何か困ったことがあったら、いつでも言ってくれ。相談にのるよ。」「子供の学校が、なかなか見つからないんだよ。どっか、英語の出来ない日本人の子供を面倒みてくれる親切な学校ないかな?」「あ、そういうことなら、丁度いい学校があるよ。この学校に問い合わせるといいよ。」彼は、学校名と大よその住所と地図を、テーブルにあったナフキンにさらさらっと書いて渡してくれました。あまり期待はしていませんでしたが、とりあえず翌日に休暇をとって、その学校に行って見ました。

 

校長先生!お願いします!

教えてもらった学校に行ってみました。教会系の学校でしたが、とても明るい雰囲気でした。受付の女性に、子供が四ヶ月程したら日本から来るのだが、学校を探していると伝えると、「校長先生は、出張中です。明日の朝、もう一度来てください。入学については、校長先生と面接して頂くことになっています。」と言われました。

 

「はぁ?いきなり校長先生?面接?なんか、めんどくさい事になったな。」と思いつつ、例の社長さんにその事を伝えると、「いつもみたいな工場のユニフォームじゃなくて、ネクタイ締めていったほうがいいよ。」とアドバイスを貰いました。

 


つまり、校長先生は親の様子も判断材料にするらしいのです。私には、そういう常識はありませんでしたので、ほんとに助かりました。翌日、私は指定された時間に、ネクタイを締めて学校に行ったのです。


校長先生は、非常に快活で終始笑顔で対応してくました。彼の説明によると、神様を大切にするが他宗教の児童を差別無く柔軟に受け入れていること、教育カリキュラムはアメリカの一般的な学校とほぼ同等とのことでした。


直感的な判断でしたが、実際に学校を見て、明るい雰囲気で好感が持てたことと 、校長先生の誠実そうな人柄で、「この学校に通わせよう」と思ったのです。私は校長先生に、社命で赴任することになったこと、会社の事業概要、教育費は十分に支払可能であること、子供は長男が
6 歳で長女が 4 歳になること、英語は出来ないこと、いずれは帰国して日本で暮らすこと、受け入れてくれる学校が見つからずに困っていること、などなど、切々と説明していると・・・・。

 


「分かりました。今、本校には日本人の児童が1人います。その子は、ニューヨークから転校してきた児童で、英語は出来ます。私たちは、英語の出来ない日本人を受け入れた実績はありませんが、受け入れても良いというクラスの先生がいるかどうか、訊いてみます。お困りでしょうから、なんとか受け入れることが出来るよう、努力してみます。来週もう一度来校して頂いて、結果をご連絡いたします。」
翌週、子供達を受け入れることが決まったと、校長先生から返事を貰ったのです。

 

息子は、9 月の新学年開始のタイミングに合わせて、一旦プレスクール(幼稚園)に入り、そのまま
小学校へ進学することになりました。娘は、保育園に入れてもらうことになり、一安心出来ました。


子供達が実際に通学・通園するようになる と、とても優しい先生方と友達に恵まれて、とても良い学校だと分かりました。妻も、先生や父兄との交流で、有意義な経験をしたようです。子供達は大人になった今でも、当時のクラスメート達と交流しているようです。私は現地の仕事では、やることなすこと大失敗しましたが、唯一失敗をしなかったのが子供達の学校探しでした。仕事中心で、子育ては妻に任せきりでしたが、少しだけ父親らしい。
ことが出来たと思います。

親は、子育てによって大人になって行くというのは、ほんとうですね。

 


【子女教育は、会社にとっても重要課題】


海外人事時代、私は海外にいる仲間たちから子女教育に関する相談を、数多く受けることになりました。帯同子女の取扱に対する悩みについては、真摯に耳を傾け、出来る限りの配慮をするように上司に上程していました。


幸いにも、子女取扱に関する決裁書が否決されたことは、一度もありませんでした。私が勤めていた会社は、とても良心的な会社だったと思います。


子供を連れて行く駐在員は、会社の子女対応に十分な配慮があれば、信頼感と安心感を持って赴任できることを、私は経験的に知っていました。親は、自分のことなら我慢しますが、子供のことになると一切妥協できないのです。


駐在員は、帯同子女の教育・養育に問題を抱えると、業務に
100%集中することが出来ません。帯同子女の就学サポートは、お金はかかりますが、海外人事が「会社の良心」を表現できる数少ないチャンスです。感謝されると、気分いいですよね。次回は「海外引越」に関するトラブルについて、考えてみましょう。

 

 

 

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