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海外で生活する前に知っておきたかったコト!Overseas Tips

【連載】失敗から学ぶ海外人事(第 19 話 海外人事泣かせの医療費精算)

2019.07.22

19 話 海外人事泣かせの医療費精算

 

私は、会社勤めを辞めてから随分経ちます。会社員時代は、多くの会社員の皆さんと同様に、毎日、遅くまで残業していました。海外人事時代のある日、残業をしていると、遅い時間なのに海外人事担当の若い女子社員
が居残っていました。

 

「どしたの?まだ、帰れないの?」と、彼女に訊くと、「はぁ・・駐在員の医療費の健保請求が溜まってるんですぅ〜」
(山本さん、助けて〜、みたいに瞳が訴えています・・・)

 

「おー、どれどれ、ちょっと見せてみ・・」溜まっている書類に目を通すと・・・「あ〜、めんどくせー。これって、ものすげー面倒だなぁ」と、思わず言ってしまいました。

 

彼女は、泣きそうになりながら、「そうなんです、なかなか書類が揃わなくて・・・」生来、大雑把な私は、「ちょっとぐらい、足りないのがあっても、いいんじゃないの?」と、いってしまいましたが、「ダメ!それじゃ、ダメなんです!全部揃ってないと、ダメなんです! 健保組合から差し戻されるんです!

 

駐在員からは、督促されるし、足りない書類の提出をお願いしても、なかなか来ないし・・・」こういうの、何か良い方法はないのでしょうか?海外駐在員と帯同家族の医療費を、日本の健康保険に適用申請できるのは、今ではよく知
られています。

 

海外で病気になってしまって、現地の医療機関で治療を受けた場合、国にもよりますが、日本人の感覚では理解出来ないほど高額な請求が来ることがあります。また、海外拠点で駐在員と帯同家族に健康保険を付与している企業が多いですが、現地の医療制度・保険制度が日本と違うため、いろいろと不便を感じる場合が多いと聞いています。

 

【健保請求の書類が、なかなか揃わない理由】


私は海外駐在中に、日本の健保に請求する書類が、なかなか揃わない経験をしました。ある時、海外事業所での激務から体調を崩し、「目眩」を感じるようになりました。立ち眩みが酷くなってきたので、医者嫌いな私も、さすがに心配になって病院に行きました。

 


米国では、いきなり大きな病院に行くことはありま せん。ホームドクター制になっているので、近所の開業医のところに予約を入れて診察を受けます。「じゃ、明後日、ラボに行って頭の
CT スキャンを撮ってきてください。」と言われました。

 

日本だと信じられないことかもしれませんが、現法で加入している保険会社と提携がない医療機関で CT をとったら、一旦全額を支払うことになってしまいました。なんと、約2000ドル(20数万円)!そして、また2 -3日してから、ホームドクターのところへ結果を聞きに行くのです。

 

 

【なかなか終わらない診察・・・・】


ホームドクターは、写真をみながら・・・・
「うーーん、じゃ、今度は明日、この病院にいって、専門のドクターに診察してもらってください。」
翌日、指定されて大きな病院に行きました。そこで、専門ドクター診察を受けると、「おそらく、過労でしょう。
CT の写真では、問題はありません。一週間程度、ゆっくり休んで様子を見ましょう。」

 


その後、何回か病院を行ったり来たりして、終了するまでに一ヶ月近くかかりました。通院日には、仕事を休まなければならず、非常に効率が悪かったですね。

 


【健保請求の書類が揃うのに、2ヶ月かかった・・・】


結局、日本の総合病院のように、一箇所で完結しませんから、領収証や診療内容、検査内容、医師のサイン等を、耳を揃えて本社の人事に送るまでに、恐ろしく時間がかかってしまうのです。

 


しかも・・・・健保組合に申請する為には、海外人事の担当者が、慣れない英語の領収証
や記録などを読み解いて、整理する必要があるのです。そうこうしているうちに、 2 ヶ月以上経過して、やっと健保へ申請できるのです。

 


でも、よくチェックして申請したけど、健保サイドで「これ、何かな?」となって、不足している書類の提出を依頼してくることもあります。これを、また駐在員に依頼して、原本が届くのに、また暫くの間、保留せざるを得なくなるのです。
そうやって、担当者のデスクの未処理の箱に、溜まっていくのです。

 


【人事の片手間では、追いつかなくなってきました】


海外進出の初期段階では、人事の担当者が、副業的に駐在員の管理業務をやっていても、特に大きな問題は起こりませんでした。しかし、多くの企業が海外進出を推進してきた結果、「人事の副業」では、業務崩壊が起こるリスクが高まってきています。

 


近年、海外駐在員向けの優れた医療サポートを提供している 会社が重宝されています。
健保への海外医療費申請代行、
24 時間医療相談、病院の紹介、医療費のキャッシュレスサービス等、非常に多岐に渡る良質のサービスを展開しています。

 


また、公平性を可能な限り担保できるよう、企業に助言することが出来る、労務管理的な視点に立ったサービスを展開しているところもあります。多くの企業で、海外事業が経営の屋台骨を支えるようになってきています。その屋台骨を支える海外駐在員の生活支援にかかる費用を、「必要経費」と考える企業が増えてきました。

 


「苦労して、海外サバイバルスキルを向上させる」というのも、一つの考え方です。私自身も、海外で苦労した経験が自信に繋がったことは確かです。しかし、ビジネス環境変化が加速度的に早くなってきた昨今、駐在員のサバイバルスキル
向上を待っている程には、悠長に構えては居られなくなった現実がありますよね。

 


一方で、「生活支援を充実させることによって、効率よく業務に集中させる」という考え方も、海外事業では重要だと思うようになりました。

 


次回は、海外赴任直後に直面する「海外での住居さがし」について、考えてみましょう

 

 

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