異文化コミュニケーション
赴任者のメンタルヘルスを甘く見てはいけない(海外よもやま話)
2019.12.21
酷い場合は自殺する人もいる!?
赴任者を送り出す。会社側の立場として気をつけなければならないことがあります。
それは、赴任者のメンタルヘルスです。
会社としては、若手を抜擢し経験を積ませようと考えるものですが、昔と今の社員は異なります。
国のため、会社のためと猛烈に働いた昭和の社員と現代の社員は異なります。
さらにゆとり世代では、教育方針も異なっているため、物事に対するプレッシャーや受け止め方も違うはずです。
意識する必要があるのは、根性論や精神論ではついてこないということです。
環境が変われば、考え方も異なる。その辺を十分に理解し、対応を考えて送り出す必要があります。
海外赴任者になると友達も少なくなります。そのため、相談する相手もいない状況に陥ります。
近頃は、飲みにケーションが嫌われる時代です。そのため、仕事が終わると直ぐに帰宅する人が大半です。
また、近年のSNSでのコミュニケーションが発達により、Face to Faceのコミュニケーションの機会が少なくなっています。
これが海外になると更に現実世界でのコミュニケーションを取る機会が格段に減り、自分だけの世界に陥りやすくなります。
会社としても、日本の上司なども定期的に接触を持つ必要があるかもしれません。
特に赴任者が少ない国に送り出す場合、プライベートでもあまり社交的でない、自分自身でストレスコントロールができない人にはあまりお勧めできないです。
実際に海外出張の間に自殺してしまった人もいます。
海外ですと、日本人と同じ志やモチベーションで仕事をする人は極めて少ないです。
それを外国人に求めてしまうと、現実とギャップなどにより、過度のストレスを溜めることになりかねません。
<海外出張中の自殺 両親に解決金500万円で和解>
御社の社員が以下のようなニュースになるのは悲しすぎませんか・・・。
手荒い首絞め強盗にはご注意ください!(海外引越よもやま話)
2019.11.22
海外で遭遇するトラブルも近年では過激になっています。ナイフで脅かされたなどの話はよく耳にしましたが、近頃では、首絞め強盗というものが流行っているのです。これは特に女性が狙われているので注意してくださいね。また、EUなどの先進国にこの首絞め強盗が起こっています。特に日本人をターゲットにしているようです。犯罪を防ぐにはまず、手口をよく知ること、そして避けることです。今回は”首絞め強盗”にフォーカスして取り上げてみたいと思います。
海外引越会社からメッセージをどうか受け止めてくださいね。
賑わう場所でも気を抜くな
駅の構内などでも、首を絞め強盗は怒っているようです。突然、二人組の男に背後から襲われ、首を絞められ意識を失った隙に、貴重品などを盗むようです。通行人に助けられたとしても後の祭り、けがは治るが物品が返ってくることはまずありません。
対処方法
日本人であること=被害者になりやすいと意識してください。犯罪集団は隙がありすぎる日本人をカモにしています。そのため、現在、日本人に深刻な被害をもたらしているのです。犯行時間短いため、昼夜、場所を問わず行われています。また、首を絞められるので生命の危機に関わります。
対処方法としては①前後左右の人に気を配ること②一人では行動をしないこと。①②ともに当たり前ではありますが、周囲を警戒し、複数で行動する安全策をとってください。周りを囲まれないよう常に警戒することを忘れないようにしてください。
今回、以上。
台北駐在員の生活費を考察②(海外引越よもやま話)
2019.11.20
前回の①では住居の家賃についてお話しました。今回はその他の生活費について取り上げたいと思います。ですが、普段の生活に密着した物価などをしれた方が良いですよね。
そこで、意外と知らないマニアな台湾生活の実態に迫りつつ、物価につていお話していきたいと思います。
直接、台湾オフィスの人間に聞いたのでリアルの情報です ( ゚Д゚)
物価の前に台湾コンビニ事情
アジア特有の文化。それは"コンビニ"です。
EU圏に住んだことがある人ならお分かりかもしれませんが、ヨーロッパなどにはあまりなくとても不便です。喉が渇いたから「コンビニで買おう」というようにはいきません。
そこでまずは台湾のコンビについて触れてみたいと思います
台湾のコンビニ4大勢力
セブンイレブン、ファミリーマート、OK MART、Hi-lifeがあります。
ちなみに、あくまでも主観ですが、セブンイレブン、ファミリーマートは品数豊富。
OK MARTとHi-lifeはローカルに根差した感じがあります。店員の年齢も高いような気がしないでもありません。
おにぎり、サンドイッチ、パンなど品数が少なく物流体制が弱いような気に思います。
また、台湾コンビニの特徴としては、多くの店舗にイートインスペースがあることです。
ローカルに根差しているコンビニなると深夜、コンビニで飲み明かしているオジサンもいます。
注意点としてはトイレが有ると無い店舗が7:3くらいの割合なので注意が必要です。また、トイレットペーパーあるが外に設置されており、予め必用分をちぎってトイレに入るトイレが多いです。
もし、入室前に紙を忘れて入ると大変なことに・・・( ゚Д゚)
台湾の物価
以下、コンビニでの物価
1.5リットルの水が25NTD、85円位、台湾ビールが330mlで39NTD、約130円位
大きさのおにぎりが38NTD、130円位、サンドイッチが29NTD、100円位
アメリカンコーヒーが25NTDで80円
市場などでも果物
果物は比較的安いと思います。
1玉35NTD、バナナが一房49NTD、りんごが6個100NTD、パパイヤが1個59NTD程度です。
交通機関
台北 MRT初乗り最低料金:20NTD
タクシー
台北 初乗り最低料金:70NTD(約280円)
大手コーヒーショップのドリップコーヒー1杯料金
台北:70台湾ドル(約280円)
食事代
果物は安いイメージです。屋台などであればイメージとして日本の半額程度です。チェーン店や日本食や普通のレストランなどあれば日本と同額、もしくは8掛け程度の値段であり、あまり日本と変わらないと考えてよいでしょう。
今回はこんなころですが、参考になりましたでしょうか。
日本人ショック!(海外引越よもやま話)
2019.10.05
日本人が最も温かくない!?
もしかしたら、日本人が世界で最も思いやりがあり、優しいと思っているかもしれません。しかし、それは賛否両論かもしれません。駐在員の方の中には日本人に馴染めなくてストレスが溜まり、精神疾患になるかたも多いようです。
なぜなら、日本人の絶対数が少ない中で、日本人同士がいがみ合ったら最悪な結果に至りますよね。
分かりきっているようなことですが、それが意外にも起こっているんです。
会社や人にもよるのですが、海外で生活していると、日本人のコミュニティはとても小さいことがわかります。
仕事人か、県人会や日本人会で知り合った方など・・・。
特に会社で日本人同士の人間関係が崩れると、かなり辛い環境になります。
そもそも、日本にいるときによりも、、圧倒的に小さな日本人グループで生活することになります。
もしそこで、批判とか嫌われたりすることを想像するとかなり恐ろしく思えませんか・・・。
いじめを受け、孤立化したら駐在生活は地獄の日々です。もちろん、少人のコミュニティでは逃げ場はありません。
仕事が終わればプライベートの友達も含めて大勢の人との会話があります。
小さいコミュニティなので悪口や批判は一気に広まります。
このよなこともあり、赴任先で心の病になる方も少なくないようです。
対処方法はあるのか!?
日本人って意外に海外で意地悪だったりするんです。そのことをまず認識しておきましょう。それだけでもかなり気持ちが軽くなると思います。
また、日本人の最大のメリットは日本語が話せること。海外にでると意思の疎通ができる日本人の存在がとても有難く感じてしますものです。
そこでお勧めしたいのが、日本人と絡まず現地や外国人の友人を持つことをおススメします。
海外でも沢山の国々人が集まる場所が必ずあります。そのようなところには日本人はあまり行きません。
だからこそ、異国の人が集まるところへ行き語り合うと良いと思います。また、友達も日本人をあえてつくらないというののも手です。
とにかく、日本人社会に依存しなくても楽しく過ごせる自分がいると、比較的日本人ショックは回避できるかもしれません。
本日はここまで!
【連載】失敗から学ぶ海外人事(第 6 話 現地スタッフ 就労の動機を知る!)
2019.04.15
第 6 話 現地スタッフ 就労の動機を知る!
現地スタッフの定期的な契約更新の日。ほんとに、憂鬱ですよね。現地従業員の契約更新を、日本人駐在員が実施している会社は、結構多いと聞いています。
業績を正しく評価して、本人を納得させて、なるべく人件費を低く抑えたい・・・でも、なかなか納得してくれないし、時間かかるし、相手によっては険悪な雰囲気になりますよね。
そもそも、労務管理の勉強など、赴任前にして行く人は殆どいないのが実情です。契約更新は、単に業績を評価するだけではないのです。それによって、その人の年収が決定されます。労務管理の「いろは」を知らない人が、何も知らないまま思い込みだけで評価・査定すると、例外なく、とんでもないことになりますね。
私も、その「いろは」を知らないうちの 1 人だったと思います。案の定、大失敗をしてしまいました。どうぞ、じっくりとお読みください。日系企業の海外事業体の組織には、大きく二通りの形態があると言われています。一つは、日本人駐在員をラインに置くやり方。
もう一つは、日本人駐在員をオフラインに置いて、「コーディネーター」という「黒子」として活動させるやり方。どちらも一長一短があります。
私が勤務していたメキシコ工場では、駐在員はラインに入って、直接の権限と責任を持ったマネージャーとして運営にあたっていました。
つまり、矢面に立つ立場にいたということなのです。当然、部下の現地スタッフ達の契約更新は、私たち駐在員がやることになっていました。
【初めての契約更新】
「はぁ?契約更新?俺たちがやるんか?そんなの、やったことねぇぞ。」最初、聞いた時は全員がそう思いました。だって、今まで評価されたことはあっても、評価したことなど無かったんですから!
たとえ業績を正しく評価できたとしても、昇給の人事的なスキルなど、知識も経験もなかったのです。そもそも、自分達の給料でさえ、どのように決められているのか、よく知らな いレベルでしたからね。日本の会社の社員は、そういう人が多いのです。
目標管理的な手法があったとしても、それがそのまま給与に 100%反映されているなんて、だれも信じてはいないのが、私たち「普通のニッポンのサラリーマン」なのです。本音を言えば、上司がなんとなく部下達の働きぶりを観察していて、それらが「総合的」に判断されているという、暗黙の了解があるような気がしているのです。
大概の日本人駐在員は、そういう「にっぽんの会社!」のやり方しか知らずに、赴任地に赴くのです。
【契約更新は、バトルフィールド!】
初めての現地スタッフの業績評価。来年度のサラリーを決めて、合意しなければなりません。私は、意外とリラックスした気分でした。実際の昇給は、目標数値の達成だけではなく、そのプロセス(つまり、取組む態度)も加味するので、数値達成度に拘るつもりはまるでなかったのです。ところが、どっこい!そうは問屋が卸してはくれなかったんですわぁ。
部下 A:「私は、残業も嫌がらずに対応したし、日本のやり方を良く学んでスキルもアップしたはずだから、ここの点数評価が低すぎます。もっと、良い点数がつくはず!」
部下 B:「僕はデータ処理については良い働きをしたはず!もっと、高い点数だ!」
部下 C:「私はこの地域でのバイヤーとしては 30 年のベテランだ。なんだ、この低い点数は?もっと、キャリアとスキルを加味した評価ができないのか?」
つまり、私の付けた点数が低すぎると、皆さん、たいそうご立腹だったようです。
【何を根拠に評価したのか?】
私の付けた点数は、アメリカ現法の評価シートをそのまま流用した評価方法でした。人事制度に無知な私は、メキシコでも適用可能だと勝手に思い込んでいたのです。
歴史の長いアメリカ現法では、アメリカ人の経験豊かな人事マネージャーが人事制度を設計し、長期に渡って運用していました。評価シートは、賃金制度・等級制度等を元に設定されたもので、アメリカの従業員には一定の公平性が担保されたものでした。
しかし、メキシコ人スタッフにとっては、その評価シートは、「得体の知れない」ものだったのです。メキシコ工場には賃金制度はありましたが、地域の実情に合った給与テーブルや等級スペックは整備されていませんでした。
私と部下達の目の前に立ちはだかっていたのは、「賃金決定の基準が曖昧」という致命的な、人事制度上の欠陥でした。
【魔のサラリー更改】
そんなことはどこ吹く風?と、なんとか、彼らを力づくで説き伏せた後、いよいよ契約更新の為の昇給の話です。ほんとに、揉めますよね。予算は決まっていますから、絶対評価に基づく昇給ではなくて、人件費予算の配分ですからね。高い評価点を取ったからといって、期待通りの昇給が獲得できるとは限らないのです。
みんなあの手この手で、少しでも高い昇給を獲得しようと必死です。
「子供が来年から学校に通うんだ」「今年、結婚するんです。」「年老いた母が病気で・・・」「大家が家賃の値上げを言ってきた」「通勤の為の車の修理で、借金が出来てしまった」・・・。
ほんとに、テレビのコントみたいな対話だったと思いますね。
それでも、力づくで了承させて、初回の契約更新は終了したのです。初年度の工場立上を一緒になってやってくれた人達だから、大奮発して、平均昇給率 4%の大盤振る舞い!
と、私は、清々しい気分に浸っていたのです。
でも、人事制度の知識が欠如していた私は、「インフレ率」という重要な要素をまったく知らなかったのです。そのことの不具合を、後になって思い知らされたのです。
【生存競争の最前線だった契約更新】
私が赴任した当時(1997 頃)、メキシコでは急速なインフレが大きな社会問題となっていました。地域によって差はありましたが、メキシコ政府の公式発表では、年率 17%~20%のインフレだったと記憶しています。別の統計では、 22%の上昇が報じられていました。
今はどういう状況かは知りませんが、私がいた当時は家賃や食料品等が、目に見える状態で値上がりしていました。先週と同じ値段では、物が買えないということ が実際にあったのです。
つまり、私が行った契約更新は、部下達にとっては実質賃金の大幅な目減りという、とても残念な結果だったのです。後で知ったことですが、同じ工業団地で操業する他社の中には、 インフレ率の補正分を昇給率に織り込んで処遇した企業もあったそうです。
私が行なった評価結果は、現地の労働市場では、お話にならないくらい競争力が無かったのでした。
部下の皆さんが激怒するのも、無理もありません。大盤振る舞いのように晴れやかに微笑みながら、「君には、 4%あげるよ!」なんて言っていたのですから、おめでたい話ですよね。
【相次ぐ退職、戦力の低下】
契約更新から 2 か月程してから、主力のマネージャーやスーパーバイザーの退職が散見されるようになりました。彼らは、契約更新の直後から転職先を探していたのです。
補充はしますが、大幅な戦力ダウンに苛まれ、事業所としての能力はなかなか向上しませんでした。
退職の理由は、「現在の生活水準を維持するためには、より条件の良い企業に転職するしかない。」ということ が多かったと記憶しています。
私がやったことは、「業績評価の明確な標準を提示することなく、人事考課を行い」、そして「経済情勢や近隣の相場を調査することなく、給料を決定した」ということでした。
今では、必死で世の中を生き抜こうとしている人達に対して、とるべき態度ではなかったと反省しています。工場操業開始から4年経過した頃、工場長に海外工場運営のプロフェッショナルが就任しました。彼が一番最初に着手したのは、人事制度の改善でした。彼が行なった改善後には、マネージャーやスーパーバイザーの離職率は大幅に改善されたと聞いています。
経営者として、人事制度の重要性を深く理解していた人でした。
【就労の動機が違う!】
先進国と途上国では、一体何が一番違っているのでしょうか?
それは、経済発展のレベルです。そのことが直接的に、所得水準、医療水準、犯罪発生率、インフラ整備状況などの、生きるということの品質に大きく影響しているのです。
欧米や日本のような先進国では、企業で働く動機として、キャリア形成や専門性のアップ、将来性などと言った美辞麗句が、ある程度通用するようですね。チャンスは多くの人達に対して、ワイドオープンであるべきだと思われています。
しかし、途上国では、所得格差が驚くほど大きいのです。そもそも、裕福な家の人達しか高等教育を受けることができず、 貧困層の人々は優良企業に職を見つけることに大きな困難が伴います。運良く就職できたとしても、自分の生活の補償は、自分自身で獲得していかなければならないのです。
また、生活環境の厳しい国々では、先進国のようには社会保障制度が整備されていない場合が多く、少しでも 多くキャッシュを稼ぐことが最重要課題なのです。オーバーな言い方をすれば、職場は生存を賭けた闘いの場なのです。
日本人とは就労の動機が違っている人達を、問題なきように統制・管理するには、日本とは違う労務管理の知恵とノウハウが必要です。近年、海外事業所の労務管理をコンサルティングするサービスが、多くの企業に活用されているそうです。
あなたの会社の海外事業所では、地域の実情の合った人事制度が整備されているでしょうか?また、業績評価の明確な標準があって、現地従業員が納得し易い評価が出来ているでしょうか?
労務問題は、日本人駐在員には見えない場所で増殖し、ある日突然、爆音と共に顕在化するのです。
今、海外事業所の事務所で仕事中のあなた、窓の外を見てください。「待遇改善」の横断幕やプラカードを掲げた多くの従業員が、抗議行動しているのが視えませんか?あなたのオフィスに、血相変えて押し寄せて来るかも知れません。
次回は、「帰任後の人材活用」について考えてみたいと思います。
【連載】失敗から学ぶ海外人事(第 5 話 異文化の向こう側 )
2019.04.08
第 5 話 異文化の向こう側
異文化理解といっても、なかなかピンときませんね。セミナー等で先生が文化の定義から話し出すと、とたんに眠くなります。私は海外駐在中には、この異文化とやらにイライラしっぱなしでした。
海外事業の最前線にいると、異文化理解などという悠長なこと言ってられない現実がありました。でも、仕事が上手く行かなくなって、やっと異文化理解が大事だなと思うようになるのです。それなら行く前からちゃんと勉強していけばいいのです。
って、今になって思う次第です。
まさに今、 若い頃の私と同様に、異文化イライラ症候群に罹っている駐在員の皆様に贈る応援歌を、今日のテーマと致します。
全世界の駐在員の皆様、キレずに、がんばってこー!
ひつこく、メキシコ工場時代のエピソードを一つ。私が人生で最初に遭遇した異文化は、メキシコ人スタッフの「言い訳」の素晴らしいテクニックでした。「あんた、そこまでいうかぁ・・・おっ、次はそうくるかぁ・・・」と、最初はかなりイライラしました。
でも、だんだんと慣れてきて、「今度は、どういう言い訳がきけるかな」と、エンジョイするぐらいの感覚になっていました。
遅刻だ!連絡しなくても、あたしはだいじょーぶ!
ある日、私の部下の現地マネージャーの女性(以下、 L)が、3時間遅刻してきました。私の顔をみても何も説明に来ず、いつものようにニコニコ笑いながら、普通に仕事に取り掛かろうとしたのです。
「またかよぉ・・・」と、かなりイラッ! としながら、彼女を呼びつけて、私「あんた、遅かったね。なんで遅刻したんや?」
L「まぁ聞いてください!朝起きたら、冷蔵庫の故障で、中の物が溶けちゃってて、床が水浸しになっていたのぉ」
私「ふーん・・それで?」
L「その応急処置をしていたので、遅れたのぉ」
私「遅れるなら、電話ぐらいしてきたらどうなんや?」
L「私の家には電話がないのよぉ」
私「じゃ、公衆電話から出来るやろうが!」
L「公衆電話は、 1 キロぐらい離れたとこにしかないのぉ」
私「車があるやろうが!」
L「私も、そう思って車にのって公衆電話まで行こうとしたら、なんと!車がパンクしていたの!だから、連絡できなかったのよぉ」
私「じゃ、 今日はどうやって出勤できたんぢゃ!」
L「お隣さんが、タイヤ交換を手伝ってくれたのぉ。今日はラッキーだったわ!」
私「つまり、あんたが連絡もなしに三時間も遅刻したのは、あんたにはまったく責任がないって言いたいのかぇ?」
L「そうなのぉー、とにかく冷蔵庫が壊れちゃってぇー。今日は、午前中を有休にしてもらってもいいですかぁ?」
・・・最初の頃は、殺意すら覚えましたね。
とにかく、何かにつけて謝らないのです。しかし、後になって、彼らがなぜこういう態度をとるのかが、なんとなく分かってきたのです。
それを教えてくれたのは、現地採用の若い日本人通訳でした。
ごめんなさいは、死につながる
通訳の彼が教えてくれたのは、「メキシコでは、上手に言い訳できないような人は、一人前の大人とみなされません」ということでした。彼の説には異論があるかと思いますが、説得力はありました。
彼曰く、
「メキシコという国は、その昔、スペインに厳しい統治を受けた時代がありました。その頃のメキシコの人達は、「非を認める」=「厳罰」という図式があって、必死で言い訳する以外に、自分自身や家族、親戚、コミュニティーを守る術がなかったのだそうです。
とにかく、命がかかっているのですから、その場限りの嘘でも何でも助かればいいのです。その為、言い訳の技術は高度に発達したのではないかと、僕は思います。
みんなの前だと面子もありますから言い訳しますが、周りの目がないところで話すと意外と素直ですよ。」
なるほど、そうだったのかと納得して以来、注意を与えるときには、周りに気を配るようにしたのです。そうすれば、意外と真摯に話を聴いてくれる人達でした。(とことん挑戦的な人も、いましたけどね。)
【自分の身は、自分で守らなければならない人々】
メキシコの人達以外にも、容易には自分の非を認めたがらない国々はありますよね。過去に他国の厳しい統治を受けた、アジアや中南米の人々も同様です。
中国は、文化大革命の頃には粛清の嵐が吹き荒れ、人々は非を認めたら大変な目に遭っていたと言われています。(少し理由は違いますが、欧米先進国にも、自分の非を容易に認めたがらない人が多いようですね。)
よくよく観察してみると、それらの国々には一つの共通点があるように思います。それらの国々 では、社会保障が整備されていなかったり、激しい競争があったり、政府が必ずしも国民を守る立場をとらないといったことです。
とにかく、生きる為には、自分の身は自分で守らなければならないという、日本の何十倍もシビアな環境があるのです。
そんな社会で暮らしている人々にとって、何が一番大事なのでしょうか?
それはきっと、自分自身の安全確保です。まず自分自身、自分の家族・親戚・親友、自分が属するコミュニティーという具合に、相互協力の人の繋がりを形成して生きているのです。
特に、貧しく生活環境の厳しい国では、この人的繋がりのルールが、 国家の法律より優先される場合があります。そこに社会が腐敗する、原因があるのかもしれません。
極論ですが、自分達の繋がりの外にいる人は、死のうがどうなろうが全く気にならない「よそ者」ということになるのです。一方で、相手を自分達のコミュニティーの内部にいる人だと認めたら、とても親切で誠実な対応をする場合が多いのです。
【異文化の向こう側にある共通点】
コミュニティーは、地縁・血縁や同じ行動様式を持っている人々の間で形成されています。行動様式とは、宗教かもしれないし、イデオロギーかもしれません。何れにせよ、同じ価値観を共有できる人々が集まって、助け合っているのです。
それでは、海外駐在員が現地でマネージメントする時に、何を分かっていなければならないのでしょうか?それは、地球上の全ての人が、共通の感情を持っているという確かな事実です。
どんなに文化的背景が違っていても、喜怒哀楽という感情は同じです。どの国の人も、喜び、怒り、哀しみ、楽しみという感情をもっています。
「どういう物事に、喜怒哀楽が反応するか」が、地域によって違っているだけなのです。現地の人達が、何を喜び、何に怒りを感じ、何を哀しみ、どんなことを楽しいと思うのか・・・。
それを分かっていることが、駐在員として必要な異文化理解なのかもしれません。そして、日本人駐在員として、現地の職場や社会で「適切な振る舞い」とはどういうものなのかを、よく知った上でマネージメントすることが、事業所運営の安定に繋がるのです。
あなたの会社の海外事業所の駐在員達は、現地の人達のコミュニティーに安心感をあたえているのでしょうか、それとも不安を感じさせる「よそ者」なのでしょうか?とても気になるところです。
なぜなら、現地の人達との信頼関係の崩壊は、海外事業所の崩壊に繋がるからです。
次回は、「現地スタッフ」との付き合い方について、考えてみたいと思います。