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株式会社マイグローバル・ジャパン

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海外で生活する前に知っておきたかったコト!Overseas Tips

海外人事支援

外赴任に伴い、赴任者の日本における社会保険の取り扱い(海外引越よもやま話)

2019.12.12

 

海外赴任に伴い、赴任者の日本における社会保険の取り扱い

1.在籍出向の場合

日本企業で雇用関係が継続したまま海外で勤務する場合、つまり「在籍出向」の場合で、出向元から給与の一部(全部)が支払われているのであれば、出向元との雇用関係は継続しているとみなされますので、会議会赴任者の健康保険・厚生年金保険・雇用保険などの被保険者資格は継続します。被保険者資格が継続している以上、当然保険料の負担(出向元及び本人)は発生します。

 

在籍出向であっても、出向元から給与の全部が支払われ、出向元から給与が全く支払れないのであれば、出向元との雇用契約は継続していないとみなされる可能性があります。その場合、健康保険・厚生年金保険・雇用保険などの被保険者資格は喪失されます。そのため、 扶養家族を日本に残して会議会赴任した際の、扶養家族の社会保険などについて、対策を考える必要があります。

 

2、移籍出向の場合

移籍出向とは、日本の出向元との雇用保険をいったん終了させ、勤務地国の現地法人などとの雇用関係のみとなるケースを指します。つまり、出向元である日本企業との雇用関係がいなくなるため、健康保険・厚生年金保険・雇用保険などの被保険者資格は喪失します。この場合も、扶養家族を日本に残して海外赴任した際の、扶養家族の社会保険について対応策を考える必要があります。

以上をまとめたの表になります。

 

必殺!赴任支度金の取扱い方法(海外引越しよもやま話)

2019.12.11

 

赴任支度金の有無については、会社によって異なるかと思います。支度金は無く、規定量が決まっている場合。また、赴任支度金があり、その範囲ないで引越しも済まさなければならない場合もあります。

 

そこで、今回は赴任支度金について深堀りしてみたいと思います。そもそも、赴任支度金はどのような位置づけに置かれているのか、さらには、気になる支度金の相場はどのくらいなのか。考察してきます!

 

赴任に際してのの支給金額の水準、支度料は旅費の一部として非課税扱いなのか

 

 

 

1.支度金の相場

~本人に対しては20~30万円するケースが多い~

赴任支度金とは、海外赴任に伴い必要となる物資を購入するために支給するものです。

支度金の設定の仕方は会社によって「資格によって金額を決定するケース」「基本給の1か月分とするケース」など様々ですが、本人に対する20~30万円程度の金額を配偶者についてはその半額程度を支払って言る場合が多いようです。

 

 

 

2.旅費・支度金の課税上の取扱

~所得税の課税対象となるケース、法人時絵の寄付金扱いとなるケース~

通常、旅費は所得税法第9条第1項第4号(以下「所得9①四」)に従い、非風になることはよく知られていますが、あくまで実費見合い分のみであり、下記の図の通り、赴任支度金を「給与の1か月分」といった形で支給するケースは給与扱いとなり所得税の課税対象となる場合があるので注意が必要です。

 

 

 

 

赴任前の準備事項【健康保険と海外旅行保険の違い】(海外引越しよもやま話)

2019.12.10

健康保険と海外旅行保険の使い分け

 

海外で医療行為を受けたと際も、日本の健康保険が利用の可否、健康保険と海外旅行保険の使い分け方など健康保険、海外旅行保険それぞれに一長一短があります。そのため、用途に応じて両者を使い分けることをお勧めします。

 

海外赴任生活におけるトラブルとしては、健康面に関するものが最も頻度が高くなっています。

海外で支払った医療費は、日本の健康保険でもカバーされますが、一旦海外赴任者が全額を立替払いし、後日払戻請求することなります。払戻しの範囲は、日本国内で保険治療を受けたとした場合の費用を基準とするため、必ずしも医療費の全額支払われるとは限りません。そのため欧米などの医療費の高い地域では、かなりの自己負担を強いられる可能性があります。

一方、海外旅行保険は、契約した保険金額を限度に医療費実費が支払われますが、持病や歯科治療については対象外になります。また、あまり頻繁に利用しすぎると、次年度の保険料が大幅に上がったり、更新できなくなる可能性もあるので赴任者及び帯同家族の節度ある利用が求められます。

そのため、現地で治療を受ける際には、歯科疾病や持病については健康保険を利用し、その他の傷病については海外旅行保険を利用するのが良いでしょう。

 

赴任者の選任!他社ではどのように決定しているのか!?(国際人事労務)

2019.12.05

 

海外赴任者を抜粋するとき、他社ではどのような方法で決定しているのか?

海外赴任者を決め方は会社によって様々かと思います。ここでは、他社どのような方法で赴任者を決定しているかを考察したいと思います。

 

①元々誰を海外赴任させるか決まっているケースが多い

海外拠点設立に伴い、社内から海外赴任者を抜粋するにあたり、「公募制」もありますが、たいていの場合は赴任してもらいたい候補者がある程度決まっているはずです。本人の意向は置いておいて、「誰を赴任させようか」と悩むことはそれほどないかと思います。これについてはどの会社でも同じようです。

 

②赴任形態をどのように考えるか?

海外赴任において、家族帯同か単身はそれぞれ長所と短所があります。そのため、どちらが望ましいかは一概に言えません。しかし、単身に比べ家族帯同での赴任は教育費、医療費など会社が負担するケースが多いため、近年の日本企業では単身のみにし、家族帯同を認めていない会社も出てきています。

 

 

海外赴任のために新たに人を採用する際の注意事項(国際人事労務)

2019.12.04

海外進出、そして駐在担当者を派遣する。しかし、会社によっては社内に十分な人がいないこともあります。そこで今回は、海外赴任用の人員を採用するための注意事項を考察します。

 

会社と既存社員の成熟度を考慮する!?

新たに採用する社員に過度の期待しすぎてはいけません。その理由は、新たに採用する社員は、その会社について知り尽くしているわけではないためです。商品・サービスにはじまり風土など、その会社についての知識が圧倒的に足りません。また、日本人の特性かもしれませんが新しい人を受け入れない傾向があります。それは村社会のため、新しい人が自分より優秀であったとしても、自分より給与が高いなどのやっかも生まれやすいです。

 

特に赴任先に既存社員がいる場合は、注意が必要です。生え抜きの社員とうまくいかないなど、日本人には多く見受けられます。そのため、会社が外資系のように実力主義であるか、社員はそのことを理解しているか、など会社の成熟度で赴任用の中途社員を採用するかはきめるべきかと思います。

 

赴任者採用時の注意事項

英語が喋れる人というケースが極めて多かったです。昔留学経験がある、外資系で働いていたなどが理由で雇うケースが伺えます。しかし、それらの多くは単純に英語が話せるだけの人が多く、実務能力は並みであることもあります。そのために以下について注意しておく必要があるでしょう。

 

①地域・業種・能力が赴任先での仕事とフィットしているか?

英語が話せる。現地語が話せるというだけで、マネージャークラスにいる人は多くありません。赴任先で必要な能力はなんであるのかを明確にしてく必要がります。

 

②退職理由の把握

単純に海外生活が好きなだけで、ジョブホップを繰り返している人もいます。子供の留学を考え採用募集する人もいます。かなり安易な理由で前職を退職している方もいるので退職の理由をしっかり確認しておく必要があります。前職が外資の場合、ドメスティック企業の文化に会わないだけで退職する方もいるので注意してください。

 

③赴任時の処遇の合意

外資系企業や大手企業勤務の方は、規程や処遇面などで交渉してくる場合がございます。特に中小企業ですと希望の処遇に対応できないことが多いです。そのため、条件をしっかり擦り合わせておくことが重要です。

海外引越見積不要論!?(海外引越よもやま話)

2019.10.28

 

海外引越の見積依頼には鬱陶しい下見があるのか?

一言でいうと、国内引越と違うからです。海外引越には、単身パックのようなパック料金的なものをやっている企業はほとんどありません。なぜなら、物量によって金額に誤差が生じからです。少しの違いで大きく金額が変わります。海外引越しは行く国と引越家財の物量で決まります。なので国内引越のように、「ちょっと増やしても大丈夫だろう」と思ってはいけません。

 

 

もちろん家具、家電などを安易に増やすことは難しいですし、航空便であればkg単位でも価格が大きく変わることもあります。そもそも、引越家財の物量を計算するには、経験や特殊な計算方法が必要であり、ご自身で計算するのは難しいでしょう。そのため、海外引越業者に電話やメールだけで見積を依頼しても、一時的な、概算を教えますが、実際に取り扱うことになれば、必ず物量を把握するために営業担当者が下見に行き、必ず見積書を再提出します。

 

 

業者が見積にくることは、赴任者にとっては鬱陶はずです。いちいち時間を確保して引越業者を待っているのは苦痛なはずです。であれば初めから、見積書作成の際に海外引越会社からの下見を覚悟して、あらかじめ受け入れることをお勧めします。

 

(編集:海外引越のマイグローバル・ジャパン)

広報担当:高山

 

日本人ショック!(海外引越よもやま話)

2019.10.05

 

日本人が最も温かくない!?

もしかしたら、日本人が世界で最も思いやりがあり、優しいと思っているかもしれません。しかし、それは賛否両論かもしれません。駐在員の方の中には日本人に馴染めなくてストレスが溜まり、精神疾患になるかたも多いようです。

 

なぜなら、日本人の絶対数が少ない中で、日本人同士がいがみ合ったら最悪な結果に至りますよね。

分かりきっているようなことですが、それが意外にも起こっているんです。

 

会社や人にもよるのですが、海外で生活していると、日本人のコミュニティはとても小さいことがわかります。

仕事人か、県人会や日本人会で知り合った方など・・・。

 

特に会社で日本人同士の人間関係が崩れると、かなり辛い環境になります。

そもそも、日本にいるときによりも、、圧倒的に小さな日本人グループで生活することになります。

もしそこで、批判とか嫌われたりすることを想像するとかなり恐ろしく思えませんか・・・。

いじめを受け、孤立化したら駐在生活は地獄の日々です。もちろん、少人のコミュニティでは逃げ場はありません。

 

仕事が終わればプライベートの友達も含めて大勢の人との会話があります。

小さいコミュニティなので悪口や批判は一気に広まります。

このよなこともあり、赴任先で心の病になる方も少なくないようです。

 

対処方法はあるのか!?

日本人って意外に海外で意地悪だったりするんです。そのことをまず認識しておきましょう。それだけでもかなり気持ちが軽くなると思います。

 

また、日本人の最大のメリットは日本語が話せること。海外にでると意思の疎通ができる日本人の存在がとても有難く感じてしますものです。

そこでお勧めしたいのが、日本人と絡まず現地や外国人の友人を持つことをおススメします。

海外でも沢山の国々人が集まる場所が必ずあります。そのようなところには日本人はあまり行きません。

 

だからこそ、異国の人が集まるところへ行き語り合うと良いと思います。また、友達も日本人をあえてつくらないというののも手です。

 

とにかく、日本人社会に依存しなくても楽しく過ごせる自分がいると、比較的日本人ショックは回避できるかもしれません。

 

本日はここまで!

 

【連載】失敗から学ぶ海外人事(第 17 話 海外給与計算は、超アナログだ!)

2019.07.08

第 17 話 海外給与計算は、超アナログだ!

海外駐在員の給与計算は、物凄く面倒ですよね。変数が多すぎます!家族帯同、単身赴任、物価の高い国・安い国、治安の良い国・悪い国、国によって違う子女教育費、配偶者の車両費、治安の良い国・悪い国、などなど・・・。

複数国に進出している企業の海外人事屋さんは、間違わないように給与計算するのに、神経をすり減らしているのではないでしょうか?

私が海外人事だった頃、海外給与担当者の Y 君(若干 25 歳)は、全世界の駐在員の給与計算を任されて、繁忙期には幽霊のような顔をして、遅くまで残業していました。

彼は、電話が鳴ったら「駐在員からのお叱りかも・・・」と、びくびくしていたそうです。聞くところによると、海外給与計算を国内給与計算並みにシステム化出来ている企業は、少ないようですね。ボタン押したら、いっぱつで給与明細まで出力でき ます!という分けでは無いようです。

海外人事セミナー等で、他社の海外人事屋さんと話をしてみても、マニュアル計算している会社が多かったですね。
なぜ、海外給与計算はそんなに面倒なのでしょうか?

海外駐在員の給与計算には、さまざまなやり方があります。下手すると、担当者が代わると、やり方も変わる・・・というような、属人的な仕事になっている部分もあるようですね。

【海外給与計算は、なぜ職人技なのか?】

そもそも、国内給与と海外給与の大きな違いは、どこにあるのでしょうか?国内の給与は「従業員全員が、日本国内で就労していることを前提にしている」ことに対して、海外給与は「赴任国によって就労環境が違う」という、大きな違いがあるのです。その為、国内給与計算は計算方法がほぼ一律でシステム化が容易ですが、海外給与は赴任国別に「生計指数」「為替レート」「ハードシップ手当」「子女教育手当」等の係数・諸手当が違っていて、システム化するのがとても難しいのだそうです。

多くの企業で、海外給与に精通した人事屋さんが、パソコンに向かって「カチャカチャ」と悪戦苦闘しながら、給与設定・計算せざるを得ない現実があるようです。

【圧倒的に人数が少ない駐在員】

海外給与計算がマニュアル対応であり続ける、もっと大きな理由があります。それは、国内従業員数に対して、海外駐在員は圧倒的に人数が少ないということです。その為、経営者は、海外給与計算システムへの投資には、消極的にならざるを得ないのです。「人数少ないから、片手間でチョコチョコって計算できるんだったら、それでいいじゃん」ってことになるのです。

 

大抵の場合、海外進出初期には、海外駐在員は非常に少ない人数から始まります。ですから、最初は人事の給与計算担当者の「副業」的な仕事として始まる場合が殆どです。現在でも、その延長線上で、パソコン上で「かちゃかちゃ!」って計算している企業が多いようですね。そして、「かちゃかちゃ」って計算している内に、担当者は「海外給与計算の社内専門家」になっていくのです。

【海外給与計算の達人!】

海外給与計算の社内専門家の誕生は、企業の「海外人事」発生の初期段階です。その担当者さんが、いつの日か「海外給与計算の達人」に成長します。しかし、海外給与計算は、「担当者しか知らない特殊な技術」になってしまいます。

この段階では、会社としては「達人」に任せておけば、とりあえず平穏な日々が通り過ぎていくので、体系的な仕組みの構築の必要性は、ほとんど感じないのです。

ところが、海外駐在員が増えて行くにしたがって、その「達人」が、溜息をつきながら呟くようになります。

「うーん・・なんか、人数増えてきて面倒になってきたな。やたら手がかかるんだよな・・・。

もうちょっと、賢いやり口ってないもんかな、こんなのに時間とられてたら、他の業務ができないや・・・」ただ、「海外給与計算」の重要性を認識しているのは、その「達人」ただ 1 人ですから、社内では大きな声にはならず、海外進出が爆発的に進行する段階になっても、経営者の目に留まらないまま、放置され続けるのです。

このパターン、意外に多いのです。注意しなければならないのは、「海外給与計算の達人」は、海外給与計算を通じて、その他の様々な駐在員支援業務を担っている場合が多いのです。

つまり、「達人」は、会社の「海外人事機能」そのものなのです。

【残念ながら、業務崩壊しました・・・】

ある日突然、「海外給与計算の達人」が、会社を辞めることになったら、どうなるでしょうか?そういうことは、良くあることです。そう です、誰も「達人の専門知識と計算技術」を短期間で習得できる後任者はいないのです。そんなに簡単なものではありません。

「ええ?これって、めちゃくちゃ難しいじゃん!こんなの独りでやってたの?」そうなんです!海外給与の計算は、一朝一夕で習得するのは不可能なのです。

海外給与の設計、国内の税務、海外の税務、その他の法的事項が、海外給与計算に凝縮されていて、まるでルービックキューブのように関連づけられて、計算されているのです。

少なくとも、人事の一年坊主には、「無理」です!大変お気の毒ですが、「達人」 に任せきりで、何も準備をしていない企業は、この時点で「駐在員の支援が出来ない」状態になってしまいますよね。

最近では、海外給与計算の良質な代行サービスを提供している、海外進出企業を対象とした会計事務所があります。つまり、会計士さんのグローバルな専門知識が必要な程、海外給与計算は奥が深いということです。

【海外給与計算には、予算と人員を投入しよう!】

ある大手企業の海外人事セミナーを、聴講させて頂いたことがあります。その会社では、海外給与に関して、未だに 1000 人弱の駐在員の給与を、表計算ソフトで「かちゃ、かちゃ」と計算しているそうです。セミナーの中で、駐在員の増加に伴って、「手作り的に複雑化してきた給与規程」を徐々に改善、比較的シンプルに処理できるように工夫してきたと、講師の方が話しておられました。現在の形にするまでには、とても苦労したそうです。

 

これは、良くあることですが、海外進出の初期の段階では、海外給与は体系的に整備されておらず、赴任国の事情、プロジェクトの事情、駐在員の事情によって、あたかも雑居ビルのようにツギハギされ、複雑化していきます。

「ツギハギ」されて出来上がった仕組みは、作った本人にしか使うことが出来ないのです。それを標準化し、誰にでも使えるようにするのは、容易ではありません。放置し続けた期間が長ければ長い程、「大手術」になりますよね。
私は、自分自身の経験からも、強くお勧めしていることがあります。

 

海外進出を開始した段階で、海外人事に予算と必要な人員を割り当て、社内に体系化・標準化された仕組みを作っておくことが、とても重要なのです。

 

海外人事業務の整備は、「海外投資」の一部だと言っても、過言ではありません。

次回は、「ビザのトラブル」について、考えてみましょう

 

 

 

【連載】失敗から学ぶ海外人事(第 16 話 無念の帰任、奥様の心の病)

2019.07.01

16 話 無念の帰任、奥様の心の病

少し前の話ですが、北米駐在中に知り合った、ある企業の北米駐在員 N さんにから、突然、 メールが飛んできました。


「やまもっちゃん、突然だけど帰任することになったよ。志半ばで帰任するのは本当に悔しいけど、やむを得ない。嫁さんが、体調崩してしまって、日本に帰らざるを得なくなったしまった。今まで色々と相談にのってくれて、ありがとう。」


それを読んで、私は、がっくり来てしまいました。Nさんは外大出身で、堪能な英語力を駆使する海外営業のキーマンだったそうで、 会社としても、Nさんの戦線離脱は「苦渋の決断」だったようです。なんとか、がんばって貰いたいと説得されたようですが、奥様の体調が改善せず、無念の帰任となったのです。

 


Nさんの帰任直前に、詳しい事情を電話でお聴きする機会がありました。Nさんの奥様は、米国の生活環境に馴染めず、日本人駐在員の奥様方とのお付き合いにも馴染めず、引き篭もり勝ちになってしまい、 心身のバランスを崩してしまったそうです。私は、 海外駐在から帰任後、海外人事配属されました。海外人事を、元駐在員の視点で改善するのがミッションでした。私は、経験的に海外駐在は「家族の総力戦」だと知っていました。
その為、帯同予定の奥様方の為に、「帯同配偶者の為の赴任前セミナー」を企画したのです。

 


私が企画した「帯同配偶者の為の赴任前セミナー」は、とても好評でした。まず、「あなたの旦那さんは、何をしに海外へ行くのか?」の概要を、私が説明するのです。殆どの駐在員は、奥様に会社の事や自分の仕事の内容等は、詳しく話すことはないようでした。世界地図に、それぞれの奥様方の行き先を表示し、その拠点が会社の事業にとってどんな役割を担っているか、そして、旦那さんがどういう仕事の為に赴任するのか、それを簡単に説明したのです。(毎回、参加者は
20 人程度でしたから、あまり時間はかかりませんでした。)

 


そのことによって、奥様方は、「なぜ、自分は海外に行く羽目になったのか」が、腹落ちして行くのです。この時、初めて、夫の仕事の重要性を知ることになるのです。
そして、海外生活カウンセラーによる、「奥様の為の海外危機管理セミナー」を聴講してもらうのです。日常の海外での危機管理を、分かり易くレクチャー頂き、不安の軽減と安全に関する心構えをして頂きました。

 


最後に、このセミナーの目玉商品は、参加者それぞれの赴任先国から、直近で帰任された「元駐在奥様との交流ランチ」でした。元駐在奥様達には、赴任国での生活(近隣の生活環境、病院の仕組み、学校の様子や習慣、各種手続きの方法、電気代・水道代などの支払い方、銀行での手続き、日本人妻コミュニティーとの関わり方、日本食の手に入れ方、現地で手に入る化粧品等々)の説明をして頂きました。実際のレシートや契約書類、銀行の小切手帳、写真、地図などを持ち寄って、参加者に丁寧にレクチャーする元駐在奥様もいらっしゃいました。

 


ある元駐在奥様に、「ここまでして頂いて、ありがとうございます。」とお礼を言ったら、「私も赴任前には、不安でうつ状態になりました。赴任直後は、辛い思いをした経験もあります。でも、楽しいことも沢山ありました。今から行く奥様方の気持ちが、痛い程分かります。お役に立てて、とても嬉しいです。」と、にこやかに言って頂きました。

 


赴任前の奥様達と帰任後の奥様、鮮明なコントラスト


このセミナーで、海外赴任の象徴的な「ある事」に、私は気が付きました。それは、赴任前の奥様方と元駐在奥様の、醸し出す雰囲気が、はっきりと違っていることでした。


赴任前の奥様方は、とても無口で大人しく、未体験ゾーンに放り込まれる不安が、心の中に充満している感じでした。セミナー中に、少し涙ぐんでいる人もいたと記憶しています。

 


一方で、元駐在奥様方は、とても明るく話好きで、自信に満ち溢れ、自分達が経験したことを、本当に楽しそうに語っているのです。それは、恐らく困難を乗り越えた経験が、その後の人生を豊かなものにしているのだと思います。

 

セミナーの最後には、「私、もっと長く居たかったの!でも、旦那の帰任が決まっちゃったから、残念!思わず、あんただけ帰ったら?って言っちゃった。また、どこかへ行ければいいな。」「そうよねぇ!山本さん!うちの旦那を、またどっかへ飛ばしちゃってよ!南極・北極以外なら、どこでもいいわ。」といって大笑いするシーンも見られました。

 


徐々に氷が溶けていくように・・・


元駐在奥様の尽きない話、かゆいところに手が届くような情報の提供で、交流ランチは毎回3時間以上かかりました。時間の経過とともに、赴任前奥様方の表情が段々と変わっていくのが、とても興味深かったですね。
なぜなら、自分達の目の前で、朗々と楽しそうに駐在時代のことを話している元駐在奥様方は、特別な才能を持った人達ではなく、自分達と同じ「普通の奥様」 だからです。そして、何よりも、元駐在奥様のほぼ全員が、「自分も、赴任前は不安でたまらなかった。」と言うからです。


興味深かったことは、元駐在奥様は自分達が経験した苦労を、誠実に、ありのまま脚色せずに、男性のような「誇張」をすることなく、具体的に話してくれることです。その事によって、「どの程度の苦労が待ち受けているのか」を、予め想定することが出来るのです。
このことが、とても大事です。精度の高い情報をインプットすることは、質の高いリスク回避行動に繋がるからです。

 


旦那さん達が、知っておくべきこと

セミナーの終わり頃には、赴任前奥様方と元駐在奥様の「ネットワーク」が出来あがって、連絡先の交換をする場面も見受けられました。女性は、基本的に面倒見が良く、親切なのです。

 


私自身も、このセミナーで多くのことを学ぶことが出来ました。赴任前奥様と元駐在奥様の中に、私の家内と子供達の姿を見たのです。私は、赴任前に、家内がどれ程不安でいたか、子供達と一緒に赴任地でどれ程がんばっていたか、そして海外赴任を通して、家内がどんな才能を開花させたか、まったく知らずにいたのです。


私の家内と同様に、多く の駐在奥様方が、赴任地での生活に問題を抱えていても、ご家庭
内で放置されている可能性が高いと思っています。女性より男性の方が、環境適応能力は高いと言われていますが、辛抱強く我慢した後に、心折れた時には、取り返しのつかないことになってしまうリスクが高まるのです。

 

なぜ対応が遅れるのでしょうか?

海外赴任は、旦那さんが赴任地で苦労するのと同様に、奥様も相当な苦労をします。駐在奥様が心労から体調を崩したり、心の病になってしまったりする背景には、何があるのでしょうか?それは、想定外のことが起こったショックかもしれないし、見知らぬ土地での孤立感かもしれないし、他の駐在員奥様方との不仲かもしれないし、子供の教育問題かもしれないし、それぞれに違ったトリガーがあるのでしょう。


駐在員の心の病は、勤怠状況・業務上の態度・パフォーマンスの低下等によって、周囲が認識することができます。また、会社の事業運営上の直接的な障害になりますから、遅かれ早かれ会社が対応せざるを得なくなります。


ところが、会社の管理外にいる駐在奥様は、心の病の症状が相当酷くなるまで、同僚も会社も、誰も気が付かないことがあります。なぜなら、誰しも家庭内の事情は、他人に知られたくないから、我慢して黙っているのです。


たとえ周囲で気が付いている人がいても、プライベートに立ち入ることに躊躇しますよね。結果として、ご家庭内での自助努力では、どうしようもなくなるまで放置される場合が多いのです。実際には、駐在員本人が自らギブアップ宣言するまで、なんの対策も講じられない場合があるのです。

 


奥様向けに、どんなメンタルケアをすればいいのでしょうか?

会社としては、駐在員の家庭の事情だから、介入し難いですよね。しかし、奥様が病気になったら、駐在員本人の活動に制限が生じることは事実です。場合によっては、駐在員の早期帰任という事態になりかねません。駐在奥様方が、心身ともに健康であることが海外事業の安定に繋がるのは、誰にも否定できないのです。


駐在奥様方は、会社が給料を払っている分けでも無いのに、駐在員を支え、家庭を支えることによって、間接的に海外事業を支援してくれています。駐在員に、「奥さんのメンタルヘルスに気をつけるように!」と、赴任前研修で海外人事が注意喚起するのは、ほとんど実効性はないでしょう。それは、会社にいる全男性従業員に、「奥さんを大事にして、ちゃんと愛しなさい」と人事が社内教育するのと同じくらい、余計なお世話に感じるでしょうね(笑)。


海外人事の皆様、是非、女性にヒヤリングしてみてください。「普段、家庭の主婦は、どうのように心のバランスをとっているの?」と、訊いてみましょう。そしたら、意外と簡単でコストの掛からない、良質な「駐在奥様向けメンタルヘルス制度」を設計するヒントが掴めるかも知れません。


あっ、「そんなこと言われても、難しいよなぁ」と思った人は、今日、仕事を終わって帰宅したら、ご自身の奥さんに訊いてみると良いかも知れませんね。
そしたら、 普段は家にいる時間が少ないあなたに「何か話したくて、待ち構えている」奥さんが、台所にいることに気が付くでしょう。

 

次回は、海外人事の「海外給与計算」について、考えてみましょう

 

 

【連載】失敗から学ぶ海外人事(第14話異国の地で病気になっちゃった。健康管理は大事です!)

2019.06.17

14 話 異国の地で病気になっちゃった。健康管理は大事です!

 

 

「山本、あのな・・・ A さんね、昨日ね、亡くなったんだ。」

 

 メキシコ工場時代、同僚の駐在員が私のデスクに来て、ショックで呆然としながら知らせてくれました。

 

 A さんは米国現法に単身赴任し、多忙にも関わらず、私たちのメキシコ工場立上げを支援してくれていました。良き兄貴分として、私たちは信頼を寄せていました。その頃、私たちメキシコ工場組も、 A さんと同様に激務に耐えていましたので、他人事ではありませんでした。A さんは、単身赴任で、帰任する前にメキシコ工場まで帰任挨拶がてら出張して来てくれました。

 

 

送別会で、 A さんは、「俺な、体調悪くて、なぜか背中が痛くてね、なかなか治らないんだ。医者に診せても、よく分からないと言われてね」と、しきりに背中に手をやっていたことを覚えています。
帰国後間もなく、
A さんは風呂場で突然倒れ、そのまま帰らぬ人となってしまいました。 40半ばだったと記憶しています。 それ以外にも、何人かの駐在員が、駐在中又は帰任後に癌や白血病、脳梗塞、尿道結石などで戦線離脱し、中には不幸にも亡くなった人もおられます。仲間が病気したり、亡くなったりするのは、とても悲しいことです。海外人事は、何をすべきなのでしょうか?

 

私は、 海外赴任支援の仕事以外に、海外の危機管理も専門分野として取組んできました。まず、下記の数値を良くご覧になって頂きたいのです。

 

 

【外務省統計: 2017 年海外邦人援護統計】

 

 

事故・災害・事件等統計表 201 7 年 (全世界)より抜粋

 

2013 年:在外邦人の要因別死者数(総死者数: 477 人)
1)傷病 (302 人: 63.3%) *自殺 35 人含む
2)事故・災害 (73 人: 15.3%)

3)殺人・強盗・傷害その他の犯罪 23 人: 4.8%)
4)テロ・紛争 0 人: 0%)
5)その他 79 人: 16.5%)

 

これは、 2017 年に海外で亡くなった邦人を、要因別に纏めた数値です。よく観察すると、この統計はもう一つ、非常に重要なことを私たちに語ってくれています。それは、在外邦人の死因のうちで、圧倒的に多いのは「傷病」だということです。このことは、見落とし勝ちな「事実」です。

 

【駐在員の病気が意味すること】

 

 

 海外駐在員は、慣れない土地で、しかも「担当者は自分だけ」という職場環境で業務をしている人が殆どです。日本で勤務している時には、直ぐに病院に行くことが出来ますが、外国では医療の仕組みの違いや言葉の問題がある為、少しくらい体調が悪くても、仕事を優先してしまって医療機関に行こうとしない駐在員が多いのです。

 

 私も、そうでした。そもそも、病院なんて大嫌いでした。もし、医者に「休め」と言われてしまうと、仕事を休まざるを得なくなります。自分が何日も仕事を休むと、工場稼動が混乱し、挽回するのに何倍もの労力がかかります。「結局、誰も手伝ってはくれない。」と分かっていましたから、病院なんかには行きませんでした。


元気なふりをして仕事を続けた方が、よっぽど気が楽だったんです。そういう駐在員は、今でも世界中に沢山いらっしゃると思いますね。駐在員に選ばれる人は、「素直な戦士」が多いのです。
でも、一旦「ぽきっ!」と折れて病気になってしまうと、交替要員は直ぐには派遣出来ま
せん。しかも、長期の療養になると、海外事業所全体に「風穴」が開いてしまい、大きな損失に繋がりかねません。

 

 

 「仕事の標準化」という美辞麗句はあったとしても、まだまだ、多くの海外事業所では、「駐在員」の働きに頼った「属人的」事業運営が主流です。駐在員の病気は、そのまま「会社の病気」に直結するのです。

 

 

 

【健康管理は海外人事の腕の見せどころ!】

 

 

 

 海外駐在員の健康管理は、海外人事にとっては姿が見えないだけに、とても難しい業務ですよね。
国によって医療制度や医療水準が違っているため、海外渡航医療に関する知識や経験、「緊急事態対応」の即応能力も必要です。場合によっては、決然と行動する「度胸」が必要な時もありますし、病人やご家族に対する「思いやり」も必要です。

 

 近年、海外医療サービス業者と契約する企業が増えてきました。良質な海外医療サービスは、現在では海外進出企業にとって、なくてはならない存在になっています。

 

 対象国の医療制度・医療水準、実際の病院での対応、保険制度、医療保険への加入、対象国の感染症、対象国の衛生水準、対象国の気候、いろいろ分かっていなければならないことが多いのです。

 

 

 健康管理を適切に実施することの出来る海外人事は、経営者にとって、大切な宝物となるでしょう。

 

 もし今、あなたの会社の海外事業所の「キーマン」が倒れたら、適切な対応が出来る体制にありますか?
その前に「適切な対応」とは、どういう対応なのか、分かっておかなければなりません。
まさか、「大変だ!大変だ!」と騒いで、何も対処できず、見殺しにしてしまうということにならなければ良いんですが・・・・。

 

 ほんとに、大丈夫ですか?

 

 

次回は、海外駐在員にストレスで起こりがちな、「メンタルヘルス」について考えてみましょう。

 

 

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