【連載】失敗から学ぶ海外人事(第 18 話 えらいこっちゃ、米国ビザがとれない!)
2019.07.17
第 18 話 えらいこっちゃ、米国ビザがとれない!
ある会社の海外人事担当の A さん、赴任予定者からのメールをみて愕然としています。「米国大使館でビザ申請の面接したところ、却下されました。すんません・・・」大変なことが起こりました。「まさか、申請拒否されるなんて、思ってもみませんでした・・・」なぜなんだろう・・担当の A さん、頭をかかえてしまいました。
「えらいこっちゃ・・・どないしよう・・・」心が、ひんやりと冷え込んできました。事業本部には、「赴任準備は順調」と報告してしまったし・・・こういうことは、よくあることです。こんな時、どうすればいいのでしょうか?
米国のビザ取得の申請で、「却下」となることは、実はよくあることです。
書類に不備があったり、虚偽の記載があると判断されたり、米国に住みつく可能性がありそうだと判断されたり・・・
領事は常に、注意深く、申請者と申請書をチェックしているのです。一度、「却下」されると、後々非常にやっかいなことになりますよね。
【赴任させるべき人材を、赴任させることが出来なくなった】
海外事業に駐在員を投入する場合、それは大きな人的投資であると共に、場合によっては会社の屋台骨を支える重要な人員配置となります。候補者の人選を注意深く行い、本人の説得に神経を使い、大きな予算を割いて赴任前研修をして、「さぁ!いよいよ赴任だ!」のタイミングで、「ビザ申請却下」。
会社としては、ほんとうに大きな痛手です。私は海外人事時代に、米国赴任予定者のビザ取得の面接日には、なんとなくそわそわしていました。会社に実績があり、ある程度の信頼が構築されている場合には、そんなに心配することはありません。でも、毎回、「まさか!」というような事態にならないか・・・とても不安でしたね。
幸いにも、私が在任中には「まさか!」は起こりませんでした。でも、世の中には、その「まさか!」によって、事業に大きな影響を受けた企業が、けっこうあるそうですね。
【係官は、注意深く人物を観察している・・】
ずっと以前に、ある日本の在外公館関係の方から、お聞きした話です。外国の人が、日本のビザを申請する場合には、大使館や領事館が窓口になっていますよね。そこで、申請にきた本人を領事さん達は、注意深く観察しているのだそうです。
申請書には、「技術者」と記載されているけど、まったく「技術者」には見えない人、「ビジネス」と記載されているけど、派手な色のシャツ着て「到底、ビジネスマン」には見えない人、「歌手」だそうだが「はぁ?」な雰囲気の、、、、、
「申請書」の記載内容と、実際に現れた人物とが、一般的な感覚で余りにも乖離がある場合や、遣り取りの中で記載内容と異なることを証言したりすると、不自然ですよね?
そういう時には、審査を厳格にするのだそうです。その結果、許可しないという結論になる場合も、あるそうです。
米国ビザの場合においても、立場は逆ですが、私たちは米国の係官に面接の時には、かならず「観察・評価」されているに違いありません。
申請に来た人物が本人かどうか、虚偽の記載がないかどうか、任期が終わったら必ず日本へ帰国するのかどうか、目的にあったビザを申請しているかどうか・・・、そういうことを、面接時に証言や態度を観察しながら、判断しているのでしょうね。
私は海外人事時代、米国赴任予定者には、「必ず、ビジネスマンらしい服装で面接を受けに行ってくださいね。そんなことはしないと思うけど、短パンにアロハとか絶対だめよ。ビジネスマンとして信頼を得ることが出来る 服装していってね。」と、強く要請していました。
【却下されそうな、深刻なケース】
米国ビザの申請却下を受けそうなパターンは、いろいろありますが、少々神経質な問題も孕んでいます。米国での不法滞在歴、犯罪歴、過去のビザ却下の履歴等は、かなり深刻です。
海外人事としては、非常に取扱いが難しいのですが、赴任候補者が「会社には言いたくないから、沈黙している。」という可能性を排除してはいけません。また、海外人事の手続き担当者が、米国入国管理法の勉強不足で、申請すべきビザが違っ
ている場合にも「却下」されることがあります。「正直」に記述したとしても、「却下」されることがあるので、ビザの選択は慎重に行うべきです。
駐在員のビザ申請は、非常に重要ですから、不明な点があれば必ず専門家に相談することが妥当だと思います。
【もしビザ却下されたら、どうすればいいのか・・・】
私が経験上言えることは、米国ビザでトラブルが発生した場合には、素人では対応が非常に困難だということです。よく分からないまま、焦って対応を間違うと状況が悪化してしまい、取り返しがつかなくなってしまいます。
米国ビザのトラブル対応に詳しい、国際法律事務所があります。そういう経験豊かで、米国側としっかり連携している法律事務所に相談すれば、少々お金がかかりますが、何らかの解決の糸口が掴めると思います。
次回は、海外人事が苦労する「駐在員・帯同家族の医療費の精算」です。